実験記録:銀血投与個体 ― ケムダー
記録者:氷川丸(白城中央医療主任)
補助者:志賀・恵山(観察補助)
実験日:白暦325年、霜月第3週
場所:白城特別実験棟 第三封鎖室
投与概要
対象:ケムダー(貪欲の化身・銀警官)
血液適合試験:非実施(金血補助なし)
投与方式:極太銀血注射、大容量(400ml換算)を頸静脈より直接注入。
目的:
- 無補助環境下での銀血自律反応の確認
- 高出力肉体構造に対する銀血適応限界の測定
- 精神汚染および所有衝動の変化観察
観察記録(氷川丸による逐語抄録)
0分後:
注入開始直後、ケムダーの体温が急上昇。白銀の血脈が首筋から腕部へと走り、
まるで神経そのものが発光しているように見える。
銀鉄の籠手(Endless Pouch)は脈動を始め、内部で何かが吸い込まれていく音が確認された。
1分後:
無音。
ケムダーが唇を歪め、「これも、僕のものだ」と、微笑。
眼球の虹彩が純白に反転。
筋繊維膨張率130%を記録。
床面の白石タイルがねじ曲がり、金属帯を圧壊するほどの膂力を一瞬発現。
3分後:
対象、周囲の空気を「奪う」ような動きを見せる。
籠手が伸縮し、壁面に刻印のような吸収痕を残す。
酸素濃度が局所的に低下。視界が歪む。
周囲エリアの監視カメラ7台が自壊。波形に銀色の干渉ノイズ。
5分後:
ケムダーは立ち上がり、鏡面に映る自身を見てこう呟いた。
「所有の境は、もうない」
瞳孔反応が途絶。意識領域が消失し、行動制御不能状態へ移行。
身体構造の一部が銀化、特に右臂部から胸部まで広範囲で硬質化。
6分後:
銀血が体外へ滲出し始め、実験室の床を覆う。
それは液体ではなく、「生きた反射光」の群体。
志賀・恵山、遠隔部屋より退避。
私のみ観察継続。
ケムダーがこちらに目を向け、笑った。無言のまま、歯の間から白い蒸気。
8分後:
銀血の波動が沈静。心拍降下。
全身より光の放出が停止し、呼吸音が再び安定。
ただし、瞳はもはや“ケムダー”のものではない。
誰か別の意志が宿ったような沈黙。ただし、人格が分離した訳では無い(分離とかは思い込みの量によるがコレは完全に皆無である)
総括所見(氷川丸)
この結果は、銀血の「所有権概念」に対する侵食能力を裏付けるものだ。
ケムダーは、生きながらにして“銀血そのもの”になりつつある。
金血を補助しない状態でこれほどの変異が生じたのは初。
銀血は生命を強化するのではなく、「奪い取る」形で進化を模倣する。
――彼の口元の笑みだけが、あまりに人間的でマトモやってたんじゃないかなって思った。
記録終了。
因みに、銀血最大値(限界値)だと、黒者(金血持ち・銀血持ち・純)みたいに異常白者(金血)を見ると、全身から吐血して光の砂と化して死に至る。
この後に、金血を一滴だけ入れたら、案の定死んだ。
記録者:氷川丸(白城中央医療主任)
補助者:志賀・恵山(観察補助)
実験日:白暦325年、霜月第3週
場所:白城特別実験棟 第三封鎖室
投与概要
対象:ケムダー(貪欲の化身・銀警官)
血液適合試験:非実施(金血補助なし)
投与方式:極太銀血注射、大容量(400ml換算)を頸静脈より直接注入。
目的:
- 無補助環境下での銀血自律反応の確認
- 高出力肉体構造に対する銀血適応限界の測定
- 精神汚染および所有衝動の変化観察
観察記録(氷川丸による逐語抄録)
0分後:
注入開始直後、ケムダーの体温が急上昇。白銀の血脈が首筋から腕部へと走り、
まるで神経そのものが発光しているように見える。
銀鉄の籠手(Endless Pouch)は脈動を始め、内部で何かが吸い込まれていく音が確認された。
1分後:
無音。
ケムダーが唇を歪め、「これも、僕のものだ」と、微笑。
眼球の虹彩が純白に反転。
筋繊維膨張率130%を記録。
床面の白石タイルがねじ曲がり、金属帯を圧壊するほどの膂力を一瞬発現。
3分後:
対象、周囲の空気を「奪う」ような動きを見せる。
籠手が伸縮し、壁面に刻印のような吸収痕を残す。
酸素濃度が局所的に低下。視界が歪む。
周囲エリアの監視カメラ7台が自壊。波形に銀色の干渉ノイズ。
5分後:
ケムダーは立ち上がり、鏡面に映る自身を見てこう呟いた。
「所有の境は、もうない」
瞳孔反応が途絶。意識領域が消失し、行動制御不能状態へ移行。
身体構造の一部が銀化、特に右臂部から胸部まで広範囲で硬質化。
6分後:
銀血が体外へ滲出し始め、実験室の床を覆う。
それは液体ではなく、「生きた反射光」の群体。
志賀・恵山、遠隔部屋より退避。
私のみ観察継続。
ケムダーがこちらに目を向け、笑った。無言のまま、歯の間から白い蒸気。
8分後:
銀血の波動が沈静。心拍降下。
全身より光の放出が停止し、呼吸音が再び安定。
ただし、瞳はもはや“ケムダー”のものではない。
誰か別の意志が宿ったような沈黙。ただし、人格が分離した訳では無い(分離とかは思い込みの量によるがコレは完全に皆無である)
総括所見(氷川丸)
この結果は、銀血の「所有権概念」に対する侵食能力を裏付けるものだ。
ケムダーは、生きながらにして“銀血そのもの”になりつつある。
金血を補助しない状態でこれほどの変異が生じたのは初。
銀血は生命を強化するのではなく、「奪い取る」形で進化を模倣する。
――彼の口元の笑みだけが、あまりに人間的でマトモやってたんじゃないかなって思った。
記録終了。
因みに、銀血最大値(限界値)だと、黒者(金血持ち・銀血持ち・純)みたいに異常白者(金血)を見ると、全身から吐血して光の砂と化して死に至る。
この後に、金血を一滴だけ入れたら、案の定死んだ。



