白銀荘地下研究区画・臨床記録 第13号
記録者:フレッチャー(金血研究主任補佐/少量金血保持者)
実験名:金血超大容量投与試験(被験者コード:KEM-07)
実施日時:白銀荘地下第2実験区画・霧濃度 0.83/温度 11.2℃
記録媒体:直感リンク対応電子記録装置 type-E3
機密区分:上級封印(レベルΩ)
I. 概要
本試験は、金血(K-Fluid)を通常投与量の10倍にて直接血管系へ導入し、被験者固有能力「所有強奪」との相互作用を観察する目的で実施した。
被験者ケムダー(銀警官階級・通称:貪欲の化身)は事前に身体・精神安定テストを通過。拘束解除後、観察セル内にて挙動を記録。
II. 投与条件
- 投与経路:頸部大動脈より直接注入
- 使用溶液:金血(純度99%、呪詛病因子を2.4%含有)
- 注入量:通常成人単位の10倍
- 観察時間:60分(0〜5分/5〜30分/30〜60分で区切り)
III. 観察経過
0–5分(初期反応)
被験者瞳孔反応に変化。眼球虹彩が金色化し、首筋部位に金色模様の発現。表皮下血流速度が上昇し、筋組織の肥大開始。
籠手(右腕部外骨格)は異常的膨張を示し、材質の一部が金血由来合金に再編。
発語:「これも僕のものだ」周囲物質への所有吸収行為を試行。自律抑制の崩壊を確認。
5–30分(中期反応)
金血の神経干渉率が上昇。能力出力範囲が空間的広がりを示し、非物質(光・空気)への所有欲求反応を観測。
籠手が自己進化を開始し、吸収対象をエネルギー化するプロセスを形成。
被験者の行動速度+198%、筋肉出力+231%。ダミー対象を瞬時に奪取し、肉体に同化。
発語:「満足などない、もっと……」自我輪郭の拡散傾向を確認。
30–60分(後期反応)
人格構造の崩壊。被験者意識は自己称賛的執着に偏向。
自己鏡像への異常親和を認め、「完璧」という語を繰り返す。
心拍リズム乱調(170→不規則化)、体温上昇(43.2℃)、全身発光発現。
金涙流出、皮膚模様拡大、筋繊維内金属結晶沈着確認。
自己所有指向による自壊行動(右上肢自己吸収)を観察した時点で投与を中断。
IV. 計測データ抜粋
| 項目 | 通常値 | 投与後最大値 | 備考 |
|------|---------|----------------|------|
| 脳波振動周波数 | 17 Hz | 65 Hz | 金血思考加速影響 |
| 血液酸素飽和度 | 98% | 124%(異常値) | K-Fluid酸化特性 |
| 神経伝達遅延 | 12 ms | 3 ms | 思考統合促進 |
| 精神同期率 | 93% | 41% | 自我崩壊フェーズ移行 |
V. 副作用および臨床的考察
1. 精神的変容:
顕著な自己中心構造形成。快楽中枢の異常励起によるナルシシズム病的拡大。
認知機能は残存するも、自他識別の崩壊が進行。貪欲性パルス活動が連続化。
2. 身体的変質:
筋組織内へ金属同化が進み、高硬度・高質量化を確認。
血流内金色沈殿物は呪詛病因子反応体と推定。
3. 病理的リスク:
自己対象化による自壊リスク極大。精神核構造断裂の可能性が90%以上。
持続投与時は確実に徘徊者化へ移行。
VI. 総括
金血の高用量投与は、被験者の欲望系人格構造と同調する形で能力を指数的に増幅することが確認された。
しかし、精神崩壊と呪詛病進行リスクが観測上臨界域を超過。
本結果より、「微量投与による思考促進」には研究継続の価値あり。ただし超大容量投与は臨床禁忌。
追加提案: 欲望抑制剤D-84および冷却処理下での再試験案を提出。
記録完了。
署名:フレッチャー(臨床観察担当)
白色の瞳がオーバーレイ画面に映る。
フレッチャーは無機質な調光の中、わずかに指を震わせ、データ通信を停止した。
観察セルの中では、ケムダーの籠手だけがまだ微細に蠢動していた。
その動脈信号は、なおも金色に脈打っている――。
記録者:フレッチャー(金血研究主任補佐/少量金血保持者)
実験名:金血超大容量投与試験(被験者コード:KEM-07)
実施日時:白銀荘地下第2実験区画・霧濃度 0.83/温度 11.2℃
記録媒体:直感リンク対応電子記録装置 type-E3
機密区分:上級封印(レベルΩ)
I. 概要
本試験は、金血(K-Fluid)を通常投与量の10倍にて直接血管系へ導入し、被験者固有能力「所有強奪」との相互作用を観察する目的で実施した。
被験者ケムダー(銀警官階級・通称:貪欲の化身)は事前に身体・精神安定テストを通過。拘束解除後、観察セル内にて挙動を記録。
II. 投与条件
- 投与経路:頸部大動脈より直接注入
- 使用溶液:金血(純度99%、呪詛病因子を2.4%含有)
- 注入量:通常成人単位の10倍
- 観察時間:60分(0〜5分/5〜30分/30〜60分で区切り)
III. 観察経過
0–5分(初期反応)
被験者瞳孔反応に変化。眼球虹彩が金色化し、首筋部位に金色模様の発現。表皮下血流速度が上昇し、筋組織の肥大開始。
籠手(右腕部外骨格)は異常的膨張を示し、材質の一部が金血由来合金に再編。
発語:「これも僕のものだ」周囲物質への所有吸収行為を試行。自律抑制の崩壊を確認。
5–30分(中期反応)
金血の神経干渉率が上昇。能力出力範囲が空間的広がりを示し、非物質(光・空気)への所有欲求反応を観測。
籠手が自己進化を開始し、吸収対象をエネルギー化するプロセスを形成。
被験者の行動速度+198%、筋肉出力+231%。ダミー対象を瞬時に奪取し、肉体に同化。
発語:「満足などない、もっと……」自我輪郭の拡散傾向を確認。
30–60分(後期反応)
人格構造の崩壊。被験者意識は自己称賛的執着に偏向。
自己鏡像への異常親和を認め、「完璧」という語を繰り返す。
心拍リズム乱調(170→不規則化)、体温上昇(43.2℃)、全身発光発現。
金涙流出、皮膚模様拡大、筋繊維内金属結晶沈着確認。
自己所有指向による自壊行動(右上肢自己吸収)を観察した時点で投与を中断。
IV. 計測データ抜粋
| 項目 | 通常値 | 投与後最大値 | 備考 |
|------|---------|----------------|------|
| 脳波振動周波数 | 17 Hz | 65 Hz | 金血思考加速影響 |
| 血液酸素飽和度 | 98% | 124%(異常値) | K-Fluid酸化特性 |
| 神経伝達遅延 | 12 ms | 3 ms | 思考統合促進 |
| 精神同期率 | 93% | 41% | 自我崩壊フェーズ移行 |
V. 副作用および臨床的考察
1. 精神的変容:
顕著な自己中心構造形成。快楽中枢の異常励起によるナルシシズム病的拡大。
認知機能は残存するも、自他識別の崩壊が進行。貪欲性パルス活動が連続化。
2. 身体的変質:
筋組織内へ金属同化が進み、高硬度・高質量化を確認。
血流内金色沈殿物は呪詛病因子反応体と推定。
3. 病理的リスク:
自己対象化による自壊リスク極大。精神核構造断裂の可能性が90%以上。
持続投与時は確実に徘徊者化へ移行。
VI. 総括
金血の高用量投与は、被験者の欲望系人格構造と同調する形で能力を指数的に増幅することが確認された。
しかし、精神崩壊と呪詛病進行リスクが観測上臨界域を超過。
本結果より、「微量投与による思考促進」には研究継続の価値あり。ただし超大容量投与は臨床禁忌。
追加提案: 欲望抑制剤D-84および冷却処理下での再試験案を提出。
記録完了。
署名:フレッチャー(臨床観察担当)
白色の瞳がオーバーレイ画面に映る。
フレッチャーは無機質な調光の中、わずかに指を震わせ、データ通信を停止した。
観察セルの中では、ケムダーの籠手だけがまだ微細に蠢動していた。
その動脈信号は、なおも金色に脈打っている――。



