放課後は、内緒の幼馴染。

 「ほらほら、睦。はやく起きて」

 「……うぁ?」

 玲乃に頬をぷにっと押されて、ゆっくり目が覚めた。

 昨晩は玲乃の部屋に泊まったんだっけ。ぼんやりした頭でスマホを確認した瞬間、背中に冷たいものが走る。

 「……っ、時間!」

 がばっと毛布を跳ね上げて、慌ててパジャマのボタンに手を伸ばす。でも、焦るほど指が言うことを聞かない。

 「あせらない、あせらない」

 背後から聞こえる、のんびりした声。

 気づけば、玲乃が歯ブラシをくわえたまま、僕のボタンを手際よく外してくれていた。

 「ありがと……このままじゃ遅刻する」

 僕が必死なのとは対照的に、玲乃はのんびりと僕を見ている。

 ひとしきり満足したのか、にこっと笑って洗面所へ向かっていった。

 その隙に、僕は冷蔵庫から飲料ゼリーを取り出して一気に飲む。水も少し。

 最低限の朝ごはんは確保。次は歯磨き。

 洗面所へ向かうと、ちょうど歯磨きを終えた玲乃とすれ違った……と思ったら、腕を引かれて中へ戻された。

 「はい、睦。準備するよ」

 「え?」

 僕の歯ブラシを手に取った玲乃が、楽しそうに笑う。

 「だいじょうぶ。任せて」

 「……はい」

 気づけば、僕は玲乃に膝枕をしてもらいながら、歯磨きをしてもらっていた。

 お願いした覚えはない。でも、遅刻しそうなのに、玲乃はやたら丁寧だ。

 僕はじっとできずに、つい視線で訴える。

 「……んー」

 「はいはい、もうすぐ終わる」

 落ち着いた声でそう言われると、不思議と従ってしまう。

 最後にうがいを済ませると、玲乃は満足そうに頷いた。

 「完璧」

 「……時間は?」

 「大丈夫。もうタクシー呼んである」

 「……最初から?」

 「うん」

 なんだか全部お見通しだったみたいで、力が抜ける。

 そのあと無事に制服に着替えて、2人でタクシーに乗り込んだ。

 遅刻もせず、慌ただしい朝もなぜかちょっと楽しくて。

 これも、玲乃と一緒だからかな。

 そんなことを考えながら、僕の1日は始まった。