放課後は、内緒の幼馴染。

 「……ん」

 朝、カーテンの隙間から差し込む光が、僕の頬を温かく照らした。

 まぶしくて寝返りを打とうとしたけれど、背中からがっしり抱え込まれていて、ほとんど動けない。

 振り向かなくてもわかる。

 玲乃はまだ夢の中で、すうすうと規則正しい寝息を立てていた。

 こんなに気持ちよさそうに寝てるなら、起こすの悪いよね。

 そう思って、朝日を避けるようにほんの少しだけ玲乃のほうへ身を寄せる。

 すると、背後から小さく笑う気配がした。

 「……睦?」

 「え、起きてたの?」

 「うん。だって、睦のほうからくっついてくるの珍しいから」

 眠そうに細められた瞳が、すぐ近くにある。

 その視線に捕まると、どうしても目を逸らせなくなる。

 「おはよ」

 そう言って、玲乃は額にそっと触れるくらいの距離で軽くキスをした。

 挨拶みたいな、やさしいやつ。

 「ひゃ……」

 照れて固まっている僕を見て、玲乃は満足そうに笑う。

 そのまま腕の力を少し強めて、僕を抱き枕みたいに抱え込んだ。

 ……落ち着く。

 玲乃の腕の中は、あたたかくて安心する。

 そのまましばらく、何も言わずに一緒にまどろんでいた。

 「そういえばさ」

 しばらくして、玲乃が思い出したように言う。

 「昨日の睦、寝相すごくかわいかった」

 「え?」

 スマホを見せられて、思わず声が裏返った。

 そこには、丸くなって玲乃にぴったりくっついて眠っている僕が写っていた。

 「猫みたいだった」

 「……やだ、見せないで」

 顔が熱くなるのを自覚していると、玲乃が楽しそうに続ける。

 「ぎゅーってしたかったけど、潰しそうで我慢してたんだよ。だから褒めてほしい」

 そう言って、後頭部を僕の胸元にすりっと寄せてくる。

 仕方なく頭をなでると、満足そうに喉を鳴らすみたいに笑った。

 そのとき、ふといい考えが浮かぶ。

 「……じゃあさ」

 「ん?」

 「今日は、玲乃が僕の抱き枕ね」

 そう言って僕は向きを変えて、玲乃の胸に顔を寄せた。

 腕を回すと、下から伝わる心臓の音が少し速くなる。

 顔を上げると玲乃は耳まで赤くなっていた。

 「それ、反則……」

 小さく呟く声が、なんだか嬉しそうで。

 照れてるの、かわいいな。

 それからというもの、眠る前になるとどっちが抱き枕になるかで小さな言い合いをする日が増えた。

 でも結局、くっついて眠るのが一番落ち着く。

 そんな、恋人になってからの日常。