放課後は、内緒の幼馴染。

 それは、玲乃と僕が恋人になってから2週間ほど経った頃のことだった。

 いつものように玲乃の部屋で並んでごろごろしていると、不意に玲乃がこちらを向いて、少し困ったように言った。

 「もう少し、睦に甘えてもいい?」

 大きな瞳をうるうるさせて見つめられると、ずるい。
 そんな顔をされたら、断れるはずがなかった。

 「……いいよ」

 「ほんと? やった」

 玲乃は子どもみたいに嬉しそうに笑って、すぐに僕の方へ距離を詰めてくる。

 「じゃあ、まずは抱っこ」

 「わっ」

 気づいた時には、玲乃の腕の中だった。

 包み込まれると、心臓の音が一気にうるさくなる。

 「相変わらず反応かわいい」

 そう言って、玲乃は僕の頭をぽんぽんと撫でる。

 そのまま、額に軽く触れるくらいの距離で、ちょん、とキスを落とされた。

 「……っ」

 近すぎて、思わず息を止めてしまう。

 「まだ緊張する?」

 「する……」

 正直に答えると、玲乃は楽しそうに笑った。

 「じゃあ、慣れる練習」

 そう言って、机の上に置いてあった棒状のお菓子を1本取り出す。

 「半分こしよ」

 僕が口に咥えたのを確認してから、玲乃も反対側をくわえる。

 少しずつ距離が縮まっていって、最後はどちらからともなく互いの唇の手前で折って食べた。

 「はい、成功」

 「なにが……?」

 「一緒にできたから」

 そう言われて、胸がじんわり温かくなる。

 「次は睦の番ね」

 「え?」

 「ほら、俺にも」

 差し出されたお菓子を、今度は玲乃が咥えて僕がかじるのを待っている。にこにこ笑っているのを見て、僕も勇気を出してもぐもぐとお菓子を食べ進めていった。最後、玲乃の唇に触れる寸前でお菓子を折ってそのまま食べたら玲乃は満足そうに頷いて

 「いいね。成長してる」

 なんだか褒められている気がして、少し誇らしい。

 気づけば、また自然と隣同士で座っていた。

 肩が触れる距離が、もう当たり前みたいになっている。

 「ねえ、睦」

 「なに?」

 「こういう時間、ずっと続いたらいいね」

 「……うん。僕もそう思う」

 特別なことは何もしていない。

 ただ一緒にいて、笑って、少し照れて。

 それだけで十分幸せだと思えるのは、
 きっと恋人になれたからだ。

 この穏やかな時間が、これからも続きますように。

 そう思いながら、僕は玲乃の肩にそっと寄りかかった。