「いやいや、さすがにそれは言い過ぎだよ。それにしても玲乃はえらいね。黒い毛が生えてきたらハイトーンの人はリタッチしないといけないから、こまめに美容院行かなきゃいけないんだね」
「まあ。美容院は真島さんたちの技術がしっかりしてるから手間には感じないかな。ヘッドスパも気持ちよかったでしょ?」
「そう! ほんとすごかった。頭溶けちゃいそうだった」
僕がうっとりとした目で思い返しているのを見て玲乃はふふ、と口端を上げた。
「はーあ。好みの髪型にしてもらったけど、クラスのみんなに見られるのはやっぱやだなあ」
「そうなの?」
と珍しく気落ちした声を洩らす玲乃に僕はこてんと首を傾げる。
「……はは。意味わかってないでしょ。睦」
「?」
目を丸くしたままの僕をスルーして玲乃がスマホに目をやった。
「おー。クラスのグループチャット活発に動いてるね。へえ。Bチームがフードとドリンクのメニューの確定版出したっぽい。ほらこれ」
玲乃はスマホの画面を僕に見せてくる。
そこには『2年A組メニュー表』とポップなロゴで書かれたA4サイズ横向きの画像が表示されていた。
具体的にフードの名前と写真が添えてありわかりやすい。これならお客さんにも伝わりやすいだろう。全体的にホワイトの雲や星がデコレーションさていてバランスがよく見応えがある。
「わ。何これ……。『みゃうみゃうオムライス~キャストのお絵描き付き~』って、これ俺がお客さんに提供するんだよね? なんか言うのめちゃくちゃ恥ずかしいな」
困ったように眉を垂らす玲乃を見て、僕は「完璧人間の玲乃でも恥ずかしいと思うことがあるんだ」と脳内にインプットする。
僕の頭に浮かぶ玲乃という人間は姿も声も顔も性格も完璧なパーフェクトヒューマンだと思っている。そのためちょっと意外な様子を見るとすぐにその像を上書きしたくなるのだ。
「わあ。おいしそう」
ウェイターが料理を運んできた。玲乃の前には卵がのったチキンドリアが置かれ、僕の前には地中海料理の目玉ともされるパエリアが置かれた。ムール貝やエビが散りばめられており、黄色くてつやつやのお米はまるで黄金の粒のようだった。
2人は文化祭の準備の話に花を咲かせた。玲乃は去年の文化祭はインフルエンサーモデルとしての仕事があり不参加だった。そのため初参加となる今回の文化祭への熱意はなみなみならぬものがあるようだ。
当初の玲乃は西園寺さんに『楽しいやつで、めんどくさくないやつがいい』と話したが、今はいつもの気だるさはどこへといったふうで熱心に準備を進めている。
特にコンカフェのキャストの衣装には人一倍こだわっていて、生地選びからミシンかけまで全て一人でこなしてしまう始末だ。
僕は西園寺さんが九重くんにこっそりと『玲乃ってば意外と頼りになるところあるんだね』と洩らしていたのを思い出し、くすりと笑ってしまった。
イタリアンを存分に楽しんだ僕はお会計にはお母さんからもらった5000円札を出した。玲乃が奢ろうとしてくれたけど、たまには自分がご馳走したいと考えて言うことを聞いてもらった。
『今日の美容院のお礼だから』
と伝えればいつもは頑なに奢ってくる玲乃も素直に頷いてくれた。
こうして並んで過ごす時間が、当たり前みたいに続けばいいのにと思ってしまった。
「まあ。美容院は真島さんたちの技術がしっかりしてるから手間には感じないかな。ヘッドスパも気持ちよかったでしょ?」
「そう! ほんとすごかった。頭溶けちゃいそうだった」
僕がうっとりとした目で思い返しているのを見て玲乃はふふ、と口端を上げた。
「はーあ。好みの髪型にしてもらったけど、クラスのみんなに見られるのはやっぱやだなあ」
「そうなの?」
と珍しく気落ちした声を洩らす玲乃に僕はこてんと首を傾げる。
「……はは。意味わかってないでしょ。睦」
「?」
目を丸くしたままの僕をスルーして玲乃がスマホに目をやった。
「おー。クラスのグループチャット活発に動いてるね。へえ。Bチームがフードとドリンクのメニューの確定版出したっぽい。ほらこれ」
玲乃はスマホの画面を僕に見せてくる。
そこには『2年A組メニュー表』とポップなロゴで書かれたA4サイズ横向きの画像が表示されていた。
具体的にフードの名前と写真が添えてありわかりやすい。これならお客さんにも伝わりやすいだろう。全体的にホワイトの雲や星がデコレーションさていてバランスがよく見応えがある。
「わ。何これ……。『みゃうみゃうオムライス~キャストのお絵描き付き~』って、これ俺がお客さんに提供するんだよね? なんか言うのめちゃくちゃ恥ずかしいな」
困ったように眉を垂らす玲乃を見て、僕は「完璧人間の玲乃でも恥ずかしいと思うことがあるんだ」と脳内にインプットする。
僕の頭に浮かぶ玲乃という人間は姿も声も顔も性格も完璧なパーフェクトヒューマンだと思っている。そのためちょっと意外な様子を見るとすぐにその像を上書きしたくなるのだ。
「わあ。おいしそう」
ウェイターが料理を運んできた。玲乃の前には卵がのったチキンドリアが置かれ、僕の前には地中海料理の目玉ともされるパエリアが置かれた。ムール貝やエビが散りばめられており、黄色くてつやつやのお米はまるで黄金の粒のようだった。
2人は文化祭の準備の話に花を咲かせた。玲乃は去年の文化祭はインフルエンサーモデルとしての仕事があり不参加だった。そのため初参加となる今回の文化祭への熱意はなみなみならぬものがあるようだ。
当初の玲乃は西園寺さんに『楽しいやつで、めんどくさくないやつがいい』と話したが、今はいつもの気だるさはどこへといったふうで熱心に準備を進めている。
特にコンカフェのキャストの衣装には人一倍こだわっていて、生地選びからミシンかけまで全て一人でこなしてしまう始末だ。
僕は西園寺さんが九重くんにこっそりと『玲乃ってば意外と頼りになるところあるんだね』と洩らしていたのを思い出し、くすりと笑ってしまった。
イタリアンを存分に楽しんだ僕はお会計にはお母さんからもらった5000円札を出した。玲乃が奢ろうとしてくれたけど、たまには自分がご馳走したいと考えて言うことを聞いてもらった。
『今日の美容院のお礼だから』
と伝えればいつもは頑なに奢ってくる玲乃も素直に頷いてくれた。
こうして並んで過ごす時間が、当たり前みたいに続けばいいのにと思ってしまった。
