「玲乃はどう思うー?」
急に西園寺さんが玲乃を指名して聞いた。クラスメイトが全員、息を殺して玲乃の答えを待っている。
「いいんじゃね」
寝惚けまなこのまま玲乃が答えると、クラスメイトがわいわいと騒がしくなった。西園寺さんが黒板にチョークで文字を書いていく。
「じゃあ2年A組の文化祭の出し物は男装・女装コンカフェに決まりっ。あと1ヶ月半しか準備期間ないから早速チーム分けしよー!」
積極的な西園寺さんのおかげでクラスがまとまりつつある。2年A組は所謂陽キャの生徒が多く、僕のような大人しいタイプは少ない。そのためお昼ご飯もぼっち飯なのだが、文化祭準備には彼らの楽しい雰囲気が存分に生かされると思って安心する。
西園寺さんが4つのチーム分けを始めた。
Aチームは男装・女装をする生徒自身がコスメや衣装を準備する。
Bチームはカフェのメインである食べ物や飲み物を準備する。
Cチームはコンカフェの内装や外装を準備する。
Dチームはポスター作成やSNS運営、集客の呼び込みの係になった。
Aチームは男子4人・女子4人の計8人、Bチームは計10人、Cチームは計8人、Dチームは計4人に割り振られた。
クラスメイト総勢30人がそれぞれのチームに分けられ役割分担を明確にしていく。
西園寺さんとその取り巻き2人はもちろんAチームへ配属された。玲乃は西園寺さんに説得されAチーム入りを果たした。その他、女子1人と男子3人に声をかけスカウトしてAチームは完成した。
他のクラスメイトは仲のいい友達同士で声を掛け合い各々のチームへ分かれていく。
その中でただ1人、僕だけがぽつんと残されてしまった。すごくショックを受けるとまではいかないが、少し寂しさを感じているとDチームのリーダーになった九重くんという男子生徒が声をかけてくれた。
彼は誰にでも平等に話しかけてくれるクラスの潤滑剤のような存在の生徒だった。僕は九重くんとだけは朝の挨拶や帰りの挨拶を数回したことがあったので、知り合いと同じチームになれてホッとする。
「守須くん。改めてDチームのみんな、よろしくな!」
九重くんの他に女子生徒が2人チームにいた。男4:女4のいいバランスだ。その3人は特に僕を嫌がるでもなく声をかけてくれた。
「じゃあみんな! たっくさん楽しい思い出作ろうね! 文化祭準備頑張ろー!」
西園寺さんの言葉にクラスメイト全員が拳を上げて「えいえいおー!」と連呼する。僕も小さな声で掛け声に合わせてみる。
なんだか今年の文化祭は楽しくなりそう。
自然と笑顔になっていたらしい。そんな僕を玲乃がどんな気持ちで見ていたかなんて想像もしていなかった。
翌日の放課後にDチームの皆で集まり作戦会議を始めた。
クーラーの効いた図書館の会議室を借りて話し合いを進める。九重くんがリーダーシップを発揮してくれたおかげで僕も積極的に話し合いに参加することができた。
「そしたら女子2人は主にポスター作成のためにコンカフェのロゴやマークを作ってくれ。SNS運用については俺と守須がメインに進めるから。今週の金曜日までにそれぞれ進めて、1度お互いの成果物をフィードバックし合おう」
女子2人は美術部員なのもあってデザインやロゴマークについては専門だそうだ。2人ともそれぞれに案を出している。
一方、僕はというとSNS運用の係になったのだがとても詳しいというわけではない。そこに一抹の不安を抱えていると九重くんが軽く声をかけてくれた。
「守須。そんなに不安そうな顔するな。俺がついてるから大丈夫だ。任せろ」
爽やかな笑顔とともに九重くんが僕の肩に手を置いた。初めての接触に一瞬どきりとしたが九重くんはまったく気にしている素振りはない。あまり気にしすぎないようにしようと自分に言い聞かせた。
「まずは動画配信ができるSNSを中心に宣伝する。コンカフェのカフェメニューの詳細や、キャストとのツーショットチェキの詳細を他のチームと話し合って決めていこう。準備期間中のみんなの様子をアップしてオフショットも撮ろう。思い出にもなるから、ってことで素材集めからだ。行くぞ守須」
「う、うん」
僕は九重くんの後ろにぴったりくっつきながら教室へと向かう。
放課後の教室では既にCチームのメンバーがコンカフェの内装や外装について話し合いをしているところだった。
人だかりができているところに九重くんがずんずんと近寄っていく。僕は普段話さないクラスメイトとどんなふうに関わればいいか内心ビクビクしていた。
「よお。九重やんかー。お前らDチームも作戦会議してたん?」
Cチームのリーダーの冴島くんが黒縁の伊達メガネをくいっと上げて九重くんと僕の顔をしげしげと眺める。特に僕のほうへ投げかける視線が強く感じて、数歩後ろに下がった。
「いやいや。守須。後ろ下がらんでええやんけ」
わはは、と関西人らしく両手を叩いて笑われた。
あ、僕の名前覚えててくれてるんだ。
冴島くんは生粋の浪速ボーイで高校進学とともに東京のこの私立天満高校へと入学したと聞く。喋りがとても上手いのだ。クラスのムードメーカー的存在で誰からも慕われている。
「守須はちょっと緊張してるから、俺から伝えるわ」
九重くんが先程話し合ったSNS運用についてCチームに説明しているのを僕もしっかりと確認していた。
「おっけー。りょーかい。うちも進捗上げてくわ。写真とか動画撮ったらええ? そんでそれをクラスのグループチャットに載せとくわ。ファイル名は『Cチーム』にしとくな。後で確認してくれや」
「さんきゅう。頼むぞ」
スムーズに報告ができたことに僕はホッとするが、自分はまだ何もしていないことに気づく。九重くんがまた軽く僕の肩を叩いて
「よっしゃ。明日はコンカフェのキャストのAチームとカフェメニュー提供のBチームの子に説明に行くからな。じゃあまた明日な」
「うん。色々ありがとう。明日もよろしくね」
そう言って、教室で別れた。
急に西園寺さんが玲乃を指名して聞いた。クラスメイトが全員、息を殺して玲乃の答えを待っている。
「いいんじゃね」
寝惚けまなこのまま玲乃が答えると、クラスメイトがわいわいと騒がしくなった。西園寺さんが黒板にチョークで文字を書いていく。
「じゃあ2年A組の文化祭の出し物は男装・女装コンカフェに決まりっ。あと1ヶ月半しか準備期間ないから早速チーム分けしよー!」
積極的な西園寺さんのおかげでクラスがまとまりつつある。2年A組は所謂陽キャの生徒が多く、僕のような大人しいタイプは少ない。そのためお昼ご飯もぼっち飯なのだが、文化祭準備には彼らの楽しい雰囲気が存分に生かされると思って安心する。
西園寺さんが4つのチーム分けを始めた。
Aチームは男装・女装をする生徒自身がコスメや衣装を準備する。
Bチームはカフェのメインである食べ物や飲み物を準備する。
Cチームはコンカフェの内装や外装を準備する。
Dチームはポスター作成やSNS運営、集客の呼び込みの係になった。
Aチームは男子4人・女子4人の計8人、Bチームは計10人、Cチームは計8人、Dチームは計4人に割り振られた。
クラスメイト総勢30人がそれぞれのチームに分けられ役割分担を明確にしていく。
西園寺さんとその取り巻き2人はもちろんAチームへ配属された。玲乃は西園寺さんに説得されAチーム入りを果たした。その他、女子1人と男子3人に声をかけスカウトしてAチームは完成した。
他のクラスメイトは仲のいい友達同士で声を掛け合い各々のチームへ分かれていく。
その中でただ1人、僕だけがぽつんと残されてしまった。すごくショックを受けるとまではいかないが、少し寂しさを感じているとDチームのリーダーになった九重くんという男子生徒が声をかけてくれた。
彼は誰にでも平等に話しかけてくれるクラスの潤滑剤のような存在の生徒だった。僕は九重くんとだけは朝の挨拶や帰りの挨拶を数回したことがあったので、知り合いと同じチームになれてホッとする。
「守須くん。改めてDチームのみんな、よろしくな!」
九重くんの他に女子生徒が2人チームにいた。男4:女4のいいバランスだ。その3人は特に僕を嫌がるでもなく声をかけてくれた。
「じゃあみんな! たっくさん楽しい思い出作ろうね! 文化祭準備頑張ろー!」
西園寺さんの言葉にクラスメイト全員が拳を上げて「えいえいおー!」と連呼する。僕も小さな声で掛け声に合わせてみる。
なんだか今年の文化祭は楽しくなりそう。
自然と笑顔になっていたらしい。そんな僕を玲乃がどんな気持ちで見ていたかなんて想像もしていなかった。
翌日の放課後にDチームの皆で集まり作戦会議を始めた。
クーラーの効いた図書館の会議室を借りて話し合いを進める。九重くんがリーダーシップを発揮してくれたおかげで僕も積極的に話し合いに参加することができた。
「そしたら女子2人は主にポスター作成のためにコンカフェのロゴやマークを作ってくれ。SNS運用については俺と守須がメインに進めるから。今週の金曜日までにそれぞれ進めて、1度お互いの成果物をフィードバックし合おう」
女子2人は美術部員なのもあってデザインやロゴマークについては専門だそうだ。2人ともそれぞれに案を出している。
一方、僕はというとSNS運用の係になったのだがとても詳しいというわけではない。そこに一抹の不安を抱えていると九重くんが軽く声をかけてくれた。
「守須。そんなに不安そうな顔するな。俺がついてるから大丈夫だ。任せろ」
爽やかな笑顔とともに九重くんが僕の肩に手を置いた。初めての接触に一瞬どきりとしたが九重くんはまったく気にしている素振りはない。あまり気にしすぎないようにしようと自分に言い聞かせた。
「まずは動画配信ができるSNSを中心に宣伝する。コンカフェのカフェメニューの詳細や、キャストとのツーショットチェキの詳細を他のチームと話し合って決めていこう。準備期間中のみんなの様子をアップしてオフショットも撮ろう。思い出にもなるから、ってことで素材集めからだ。行くぞ守須」
「う、うん」
僕は九重くんの後ろにぴったりくっつきながら教室へと向かう。
放課後の教室では既にCチームのメンバーがコンカフェの内装や外装について話し合いをしているところだった。
人だかりができているところに九重くんがずんずんと近寄っていく。僕は普段話さないクラスメイトとどんなふうに関わればいいか内心ビクビクしていた。
「よお。九重やんかー。お前らDチームも作戦会議してたん?」
Cチームのリーダーの冴島くんが黒縁の伊達メガネをくいっと上げて九重くんと僕の顔をしげしげと眺める。特に僕のほうへ投げかける視線が強く感じて、数歩後ろに下がった。
「いやいや。守須。後ろ下がらんでええやんけ」
わはは、と関西人らしく両手を叩いて笑われた。
あ、僕の名前覚えててくれてるんだ。
冴島くんは生粋の浪速ボーイで高校進学とともに東京のこの私立天満高校へと入学したと聞く。喋りがとても上手いのだ。クラスのムードメーカー的存在で誰からも慕われている。
「守須はちょっと緊張してるから、俺から伝えるわ」
九重くんが先程話し合ったSNS運用についてCチームに説明しているのを僕もしっかりと確認していた。
「おっけー。りょーかい。うちも進捗上げてくわ。写真とか動画撮ったらええ? そんでそれをクラスのグループチャットに載せとくわ。ファイル名は『Cチーム』にしとくな。後で確認してくれや」
「さんきゅう。頼むぞ」
スムーズに報告ができたことに僕はホッとするが、自分はまだ何もしていないことに気づく。九重くんがまた軽く僕の肩を叩いて
「よっしゃ。明日はコンカフェのキャストのAチームとカフェメニュー提供のBチームの子に説明に行くからな。じゃあまた明日な」
「うん。色々ありがとう。明日もよろしくね」
そう言って、教室で別れた。
