カレカレ!?

 最近、高原くんはテーブルに着いて、熱心に何かを描いている。一心不乱に。
 絵のこと以外、何も目に入ってない様子。
 感心、感心。

「スバルくん、この前から一生懸命、何書いてるの?」
 1年生の女子、前田さんが訊く。
「あ、鉛筆! 鉛筆描いてるんだ」
 鉛筆か⋯⋯。
「ステッドラー」

 ケホッ、急にむせる。
「部長、大丈夫ですかー?」という前田さんの声に、「大丈夫」と答える。

 ステッドラーって、この前貸した?
 あれで何か、ビビッと来ちゃったわけ? 天才か?

「ステッドラーって、部長が使ってる鉛筆?」
「⋯⋯教えない」
「教えないってなんで?」
「教えない」
 なんなのよ、と言って前田さんは自分のイーゼルに向かった。

 展覧会も近い。
 みんな、気合いが入ってきてる。

 ⋯⋯教えないってなんでだ?
 鉛筆なら今日もここに持ってきてるのに。
 前田さんも部室の鉛筆使ってないで、そろそろ自分に合った鉛筆を使っていい頃なのに。

「前田さんは、鉛筆に興味あるの?」
「鉛筆ですかー? ええー、よくわかんないし」
「それなら試しに僕の、ふぐっ!」
 大きな手が僕の口を塞ぐ。
 高原くんだ。いつの間に背後に回り込んだ!?

「ハイユニ、使う?」
「スバルくん、いいの?」
「今、出すよ」

 誰かのために何かしてあげるなんて、微笑ましいなぁと見ている。
 けど、さっきのはなんだったんだ!?

「貸してもらったら、試しがきするといいよ」
「あ、スバルくん、待って。スケブ持ってくる!」
 1年生同士の交流、かわいいなぁ。
 やっぱりひとり増えるだけで、一気に美術室の空気、変わる! 部活してる!

「へぇ、なんか芯がやわらかい。部長のとはどこが違うんですかぁ?」
「僕のは製図⋯⋯ふぐっ」
「ドイツ製で、高いから」
「え!? 高いの無理かも」
(嘘つき! ハイユニの方が高いのにッ!)

「じゃあ、わたしもハイユニにしようかな」
「安いのがいいなら、グレード落ちるけど、ユニもあるよ」
「えー、腕前に合わせたのでいいです! じゃあわたし、早速買いに行きまーす」

 お疲れ様でした、と言って前田さんは帰っていった。

「高原くん、さっき嘘ついたでしょ?」
「ついてません」
「ハイユニの方が高いでしょう?」
「⋯⋯ついてません。安かったデス、Amazonで」
 目が、明後日の方向、見てる。
 嘘だよ、嘘!

「もう、いいよ。前田さんに今度、貸してあげ⋯⋯近いよ?」
 目の前に、高原くんの顔。
 身長の割に、小顔なんだよな。
 まつ毛が長い。

「貸さないで。代わりに俺が買うから」
「何を?」
「ステッドラー。お揃い」
 彼はスマホを取り出すと、お気に入りリストからすぐにステッドラーをカートに入れた!

「ええッ!? ハイユニあるじゃん」
「お揃い」
 ”お揃い”って、”かわいい”ヤツじゃーん!

(続)