夕暮れの美術室。
 美術室の中は、夕焼けに満たされてる。鮮やかな橙色だ。
 静寂の中、僕と高原くんが絵を描く音だけが響く。

「ちょっと、恥ずかしいからあんまり見ないでよ。僕の絵なんか、下手くそなんだから」
「動かないでください」
「え?」
「今、描いてるとこなんで、横顔」

 何を? 何を描いてる!!!
 緊張して、身体がカタカタ小刻みに震える。

「デッサンなんてじっくりやらないで、クロッキーにしたらいいじゃない。一瞬の動きを切り取るのも、いい勉強だよ」
「無理っすね。じっくり見たいんで」

 動揺する。頭の中がこんがらがる。
 なんなんだろう、この子? いつもなんか、調子が狂う。

「見られたら減る!」
「減らないし! ⋯⋯あ、先輩、その絵、色調変えた?」
「え!?」

 よく見てるなぁ、この辺に青、落としてみたんだよな。

「帰ります」
「え!?」
「あざーした」

 なんなんだ、一体。
 ⋯⋯調子狂う。

(続)