「痛ッ!」
 足元に画鋲がひとつ落ちて、高原くんがそれを拾う。それから僕の手元をじっと見て。
「血。見せて」
 ガッと手首を掴まれる。ぷくっと、指先の一点に、鮮やかな赤。

「これ、保健室っすね」
「いや、大袈裟な! うわっ!」
 バラバラッと、持っていたポスターの束が足元に落ちていく。
 急に身体が浮かび上がって、重力を感じない。
 ⋯⋯浮いてる?

「高原くん、高原くん、怖いよ!」
 って言うか、恥ずかしいよ! こんな歳になって、抱き上げられるなんて!
「暴れると血がつきますよ」
「あ、なんかごめん」
 良くない、でも良くない気がする。

「下ろして? 恥ずかしいから」
 足をバタバタさせて抵抗する。背の高い高原くんは、ビクともしない。
 ――チッて、今、舌打ちした!?
 微妙に怒ってる? 僕が鈍臭いから?
「⋯⋯してみたかったのに、お姫様抱っこ」

 ええーッ!? お姫様抱っこって。
 ええーッ!? 僕が”お姫様”なの? もしかして!

(続)