搬入はあっという間に終わってその後、直帰あり。
 公欠で直帰は美味しいと、みんなが帰っていく中、僕は他の学校の作品も見ていくことにした。

「あー、今年もC高の絵はすごいなぁ」
 この高校は、顧問の先生が本腰入れて活動してて、毎年いろんな賞をもらっている。

「そっすね。俺、虎の絵が好きっす」
「うわッ!」

 突然、後ろから耳元で囁かれて大丈夫な人、いたらすごい。

「た、高原くん! みんなと一緒に帰らなかったの!?」
「そっすね」
「なんでひとりで残ってんの?」

 高原くんは僕、自分、と人差し指でさした。

「ふたりっすね」

 ぼぼっと顔の温度が高まる。
 赤くなりすぎて、熱暴走してるのでは、と疑う。

「一緒に回りましょう」
「なんで?」
「⋯⋯カレカノ」

 ――!?
 からかわれてる!?
 なんで?

「あれ? ”カレカレ”が正解っすか?」

 ブンブンと首を振る。
 高原くんはそんな僕をキョトンと見てる。

「ガチかわいい」
「かわいくない!」
「かわいいっす、挙動不審」
「挙動不審なのはいつも、高原くんじゃん!」

 しーん。
 ガオーと今にも虎が飛びかかって来そう。

「⋯⋯高原くんじゃん」
「次、行きましょ」
「高原くんじゃん⋯⋯」

 僕は捕獲された動物のように、引きずられていった⋯⋯。
 ――高原くん、”カレカレ”は聞いたことないよ。

(続)