白銀荘――グラファイトの壁に囲まれた国。銀警察署の事務室には、霧が窓に張り付いていた。
球磨。屈強な白人男性、白い髪に白色の瞳を持つ銀警官で、署長代理を務める。しかし選抜センスは皆無だった。
その日、公衆電話からの緊急依頼が球磨のデスクに届いた。
受話器の向こうから響くのはオパル=フェイア――白銀荘の外に住む成人女性の声。震えている。

「お願い……私を長年虐げてきた大家族を……抹殺して」

命懸けの訴えに、球磨の白色の瞳がわずかに揺れる。

「分かった。任せな★」

軽い口調で請け負ったものの、オパルの声の奥にある絶望が心の端で引っかかる。
球磨は出動メンバーを選抜する。オジェ=ル=ダノワ、ラ=イル、ユディット、アルジーヌ。いずれも屈強な白人男性、白い髪と白色の瞳を持つ、冷酷な銀警官たちだ。
オジェはチェーンソー付き大斧、ラ=イルはチェーンソーとガンソード、ユディットはチェーンソー付き大剣、アルジーヌは大型チェーンソーを操る。

「完璧な布陣だ★」

球磨は満足げに笑った。しかし、その選択には早くも不穏な影が漂っていた。
多摩――球磨の同僚で、たまたま事務業務に就いていた銀警官。屈強な白人男性、白い髪と白色の瞳を持つ彼は、球磨の選抜を目撃すると眉をひそめ、書類を掴んで詰め寄った。

「球磨たん、家族抹殺にこの四人? ここは人間のデカに頼むのが普通なんだけど……やっちゃったならいいっす★」

オジェからの報告書を手にした多摩が畳みかける。

「オジェくんが言うには、任務の詳細が曖昧だ。家族って誰だ? 色無し汚物者(白黒者)か? 黒人(黒者)か? ただの人間なら、さっきの人間のデカに渡すべきだけど、やっちゃったならいいっす★」

球磨は肩をすくめ、笑顔で応じる。

「細かいことは気にすんな★」

多摩は角度を付けてドヤ顔する。

「まぁ、そっすね★」

球磨は聞こえないふりをして、「次は大丈夫っしょ★」と適当にあしらう。多摩はポケットからビスケットを取り出して袋を乱雑に開けて口に投げ込んで、報告書を机に叩きつけた。
事務室の空気は重く沈む。
多摩と球磨は、オパルの依頼に否応なく疑念を抱く。
「白銀荘外の大家族……金血呪詛病(ホモtheゲイ)の関与か? それとも復讐の裏に何かある?」

多摩が口にした疑問を、球磨は首を振って遮る。

「考えても無駄っすね★」

思考を放棄するように、球磨は多摩を誘う。

「とりあえず飲もうな★」

その夜、白銀荘の壁が見えるアパートで宅飲みが始まる。
酒瓶が並び、窓は霧に覆われたまま。二人は笑い合うが、心の底には不安が沈殿していた。

「オパルの声……死にかけだったね」

多摩の呟きに、球磨はグラスを傾けながら応じる。

「そっすね★」

オジェたちの武器――大斧、ガンソード、大剣、大型チェーンソー――が血を求める姿が脳裏に浮かぶ。しかし球磨は酒でその像を押し流そうとする。
夜は深まり、霧はさらに濃くなる。
球磨の軽い笑い声がアパートに響く一方で、多摩の白色の瞳には疑念が消えない。

「この任務……大丈夫かな???(嫌な予感しかしないな★)」

オパル=フェイアの絶望的な声、家族抹殺の依頼、球磨の選抜ミス――すべては霧に溶け、白銀の壁の冷たい輝きだけが残る。
オジェたちの出動は血の嵐を呼び、球磨と多摩は酒に逃げ、真相から目を背けた。