白銀荘――グラファイトの壁に囲まれた国。銀警察署の事務室には、霧が窓に張り付いていた。
球磨。屈強な白人男性、白い髪に白色の瞳を持つ銀警の警官で、署長代理を務めている。だが、その選抜センスは絶望的に欠けていた。
その日、彼のデスクに一通の依頼書が届く。差出人の名は、アクチノ=ライタ。
白銀荘の遠く離れた外で暮らす成人男性。精神は崩壊し、死に瀕したような顔色で署を訪れた。白い顔は憔悴しきり、虚ろな目だけがかろうじて燃えている。

「俺を……長年虐げてきた義理の大家族を……抹殺してほしい」

声は震え、復讐の炎が、消えかけの命をかすかに照らしていた。
球磨は書類を手に取り、白い瞳でアクチノを見据える。

「了解した。任せな★」

軽い口調に、アクチノは一瞬怯むものの、やがて静かに頷いて去った。
球磨は出動メンバーを選抜する。カエサル、エクトール、ラケル。いずれも屈強な白人男性で、白い髪と白色の瞳を持つ。黒者や白黒者を仕留めることで知られる賞金稼ぎだ。
カエサルはマシンピストルを、エクトールはマシンガン型のボウガンを、ラケルはマシンガン型の弓を扱う。

「完璧なチームだ★」

球磨は満足げに笑う。しかし、その選択には不穏な影が漂っていた。
彼の同僚、熊野が、その様子を目撃する。屈強な白人男性で、白い髪と白色の瞳を持つ銀警の警備員兼事務員。眉をひそめ、書類を掴んで詰め寄る。

「球磨くん、金目当て三人で家族抹殺? 選抜メンバーミスってない???」

球磨は笑顔で手を振る。

「大丈夫っすよ★」

熊野は唾を吐き、怒気を含んだまま出動メンバーへの報酬金を翌朝振り込む手配を済ませる。そして廊下で球磨を呼び止めた。

「アクチノくんの依頼、怪しくないか? 家族抹殺なんて、人間等のサツに頼めばいいのにと思わないかい???」

球磨は肩をすくめて応じる。

「細かいことは気にすんな★」

熊野の白色の瞳が鋭く光る。

「僕なら人間のサツに頼む方っすね★(あ、マジで言えばよかった)」

球磨は聞こえないふりで通り過ぎ、事務室を出て行った。

熊野は一人、依頼書を見つめる。アクチノ・ライタの精神崩壊、義理の大家族への復讐――白銀荘外の事情は不明だが、この依頼は異様としか言いようがない。
金血呪詛病(ホモtheゲイ)の関与か。それとも、黒者や白黒者の影か。
カエサル、エクトール、ラケル――三人の冷酷さは周知の事実。彼らが家族を抹殺すれば、そこには血の海しか残らない。

熊野は拳を握り、球磨の無神経さに苛立つ。

「こいつの選抜ミスが、また誰かを壊す★」

霧が窓を覆い、事務室の空気はさらに重く沈んでいった。

――夜。
球磨はアパートに戻り、ベッドの縁に腰を下ろす。
アクチノの虚ろな目と、熊野の険しい視線が脳裏に浮かぶ。それでもすぐに振り払った。

「僕の選択は、間違ってない!」

その呟きは霧に溶ける。
カエサルのマシンピストル、エクトールのボウガン、ラケルの弓。
――血に飢えた三つの影を思い浮かべ、胸に一瞬の不安がよぎる。

だが、すぐに打ち消した。

「まぁ、大丈夫っしょ★」

白銀荘の壁は冷たく輝き、霧深い街に不穏な気配が満ちていく。
アクチノの復讐は、カエサルたちの手で――ついに実行されようとしていた。