臆病な旦那様をあやかしから守ります


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「お部屋を準備させていただきました、ご案内します」

使用人の方にそう言われ、緋瑠人さんと一緒に里佳子さんたちがいる部屋をでて広々としている廊下を歩き始める。
私は声を顰めるように緋瑠人さんに顔を寄せた。

「なぜ、あんなに急いで文書を調べる必要が?」

すると緋瑠人さんは「ううん」と軽く唸ったあと、苦笑いを浮かべた。

「おそらく、早く遺産のありかを知りたいんじゃない?」

「遺産?」

「田沼が言うには、鎌苅家には元当主が残した眠っている遺産がまだあるんだけどその子ども達はそのありかを知らないらしい」

「それを探すために、なぜ伊澄家とのやりとりを調べないとだめなんですか?」

「うちの親父と鎌苅家の親父は旧友で、なんでも話す仲だったらしくて遺産の手がかりを知ってるかもって考えたんだろうね」

「なるほど…」

あの文書の量を調べるとなると今日は寝る暇もなく作業しないといけないのではないのだろうか。
どうせだったらこの家にただじっといても時間が過ぎるのが遅いと感じてしまいそうだし、何か手伝えることはないだろうかとふと考え、私は足を止めかけた。
が、私の思考をよんだのか、緋瑠人さんの手が私の手を捕まえる。

「手伝いにいくなんて言わないでね」

「でも、やはり伊澄家の嫁としてここは」

「しようもない家の遺産の取り合いに和香さんを巻き込むわけにはいかない、それに」

と、少し言葉を詰まらせた緋瑠人さんが少し前を歩く使用人の方に声をかけた。

「すみません、部屋の場所はどこですか?」

「え?あ、この廊下の突き当たり、右奥です」

「自分たちで向かいますのでここまでで大丈夫です、案内ありがとう」

使用人は少し戸惑いながらも「かしこまりました」と頭を下げて去っていく。
誰もいないことを確認して、緋瑠人さんは再び私に顔を近づけた。

「さっきの満さんの言っていたことが気になる」

満さん?と首を傾げた。口は悪く、私たちを下に見るような貶すようなことばかり言っていてあまりいい人だとは思えなかった。
あとは…ああ、気になること、確かにある。

「目のことですか?」

私がそう言うと、緋瑠人さんは小さく頷く。

「まあ、あの人のことだから木の枝に刺さってっていうのもあり得ると思うけど、そもそもこの家」

「…なんですか」

緋瑠人さんは少し怯えたように肩をすくませ口をへの字に曲げた。

「あやかし、出やすそう」

「言霊ってありますからね、緋瑠人さん」

「ひえ」