白城の訓練施設は、砂漠の陽光を浴びながら汗と鉄の匂いに満ちていた。白い壁に囲まれた広場で、朝日は屈強な白人男性として立ち、風に揺れる白髪と輝く白色の瞳が印象的だ。白城の上級保安官である彼は、明るくやんちゃなムードメーカーだが、新米保安官の教育では厳しさも見せる。
今日の教え子はジンライム――アスペルガー症候群を持つ新米保安官で、細身の体に鋭い目、そして細かい規則やパターンへのこだわりを持つ男だ。
「やっほー、ジンくん! 今日から僕がビシバシ鍛えてやる!」
朝日はニヤリと笑い、ジンライムの肩を叩く。ジンライムは一瞬硬直し、「…肩を叩くのは訓練ルールにありません」と呟いた。
「君、細かいね! まあいいよ。まずは射撃だ!」と朝日は笑いながら、リボルバーを手渡す。
射撃場で、ジンライムは標的を凝視し、銃の角度を何度も確認する。
「銃口の角度が3度ズレている…風速も計算しないと…」と呟き、なかなか撃たない。
「考えすぎだ! 感覚で撃つ!」
朝日は苛立たしげに叫ぶが、ジンライムは眉をひそめ、「感覚は不正確です。データが必要です」と反論した。
朝日は頭をかき、「じゃあ僕の動きを見て」と構え、パン!と軽快に標的の中心を撃ち抜く。砂埃が舞い、ジンライムの目がわずかに輝いた。
「…風速補正なしで、あの角度……」
彼は分析を始めるが、朝日は「完璧じゃなくても当たるじゃん? 実践だ、撃ってみな!」と促した。
渋々構えたジンライムの初撃は標的の端をかすめた。
「いいぞ、初撃にしては上出来だ!」と朝日は拍手し、続けるよう促す。ジンライムは何度も撃ち、次第に精度を上げていった。
「ルールも大事だが、戦場じゃ柔軟さも必要だからね?」
「…柔軟さ、ですか」
ジンライムは呟き、朝日の明るさに少し心を開いた。
訓練の終わり、朝日は再び肩を叩き、「君、いい保安官になる!」と言う。ジンライムは小さく頷き、初めて笑顔を見せた。