四月になって、頬を撫でていく風の温度がすっかり優しくなったように感じる。去年の今頃は新しい環境でうまくやっていけるか、不安でいっぱいだったっけ。もう入学して一年経ったんだなぁと感慨深く思ってしまう。
校門前の桜は今年も見事に咲き誇っている。この学校に加わる新入生を歓迎するように、そして無事に進級した在校生を祝うように。
過ごしやすい季節だと喜ばしいことなのに、うかうかしていたらあっという間に夏がやってくる。じりじりと肌を焦がす太陽は、あまり好きじゃない。
「新入生、どれぐらい入ってくれるかな……」
半袖になるには少し早いか? と、太陽が雲に隠されている空を見上げながら考えていれば、隣を歩く水野谷が少し不安げにそう言った。
「次期部長は大変だね」
「風間サン? うちは貴方が頼りなんだからね?」
「期待を裏切るようで悪いけど、俺は客寄せパンダには向いてないよ」
「そう言わずにさぁ……」
水野谷が肩を組んでくるけれど、残念ながら俺は口下手だし、人前に立つのも苦手だ。三年の先輩から「新入生が入ってきて、俺らが引退したらお前たちが引っ張っていけよ」と言われたけれど、プレッシャーにしか感じなかった。隣で同じように聞いていた水野谷は部活に対するやる気がますます高まったらしいけれど、俺は俯くだけで、先輩の言葉にはっきりと頷くことができなかった。
あれからずっと胸の奥で何かがつっかかっている気がするのは、すぐに頷けなかった後悔があるからだってわかっている。そんな俺が新入部員の勧誘なんて、できるわけない。
「まぁ、いいよ」
「え?」
「遥が走ってるところを見たら、入部したいって思う人がいるはずだから」
それにお前がそういうの苦手だってわかってるしな、と付け足してにかっと笑う水野谷の顔を見たら、なんだか少し胸のつっかえが取れた気がした。
「……俺にできることがあるなら手伝うよ」
「遥……!」
「できること、ならね」
練習着に着替えてから声をかければ、感激した様子の水野谷が抱きついてくる。何でもやる、とは言ってないんだけど。……まぁ、いっか。距離感の近い水野谷を引き剥がすことを早々に諦めて、何やら話し続けている声を右から左に聞き流しながらグラウンドに向かう。
既に陸上部のメンバーは数人集まっていて、各々で準備運動をしていた。その輪の中に混ざりながら、ストレッチを開始する。



