翌日の放課後、僕は原口が掃除をしていることを保健の先生に話した。

 保健の先生は、その日の原口の放課後の様子を見て、すぐに顧問の先生に報告してくれた。

 でもその翌日、原口は部活に出ていなかった。

「先生、今日原口って学校休んでます?」

 サッカー部の顧問の渋沢先生に尋ねる。

「いや学校は来てたって聞いたんだけど……部活に来てないんだよ。あいつ休んだことないから、あとで探そうと思ってるんだけど」

 嫌な予感がする。

 僕はお辞儀をしてから、走ってサッカーボールや三角コーナーなどがある倉庫へ行く。

 いない。

 体育館は他の部員が使っているから、いじめの場所にしないか。

「っ」

 初めて廊下に足を踏み入れる。

「は、原口!」

 走っていたら、どこかの教室でドンドンって音がした。

 いじめの告発のために、スマホをつけて録画を始める。

 鍵がかかっている。職員室で鍵を借りて、教室のドアを開ける。原口は全身ずぶ濡れで、手をガムテープで拘束されていた。

「先輩、こ、怖かったぁ」

 ガムテープを取った途端に、僕に抱きついてくる。

「大丈夫。もう平気だから」

 泣いていたので、涙を拭って背中を撫でる。落ち着いたのか、原口はふにゃっと笑った。

「部活やめようかなぁ。習いごとにでもしようかな、サッカー」

「え。原口がそんなことする必要ない。見て、これ。ちゃんと録画したから」

 原口にスマホを見せる。

「ありがとうございます。でも俺……大人にこんな惨めな格好、見せたくない」

あ。しまった。それは考えていなかった。

「なんとかしようとしてくれて、ありがとうございます。嬉しかったです。でも俺……もう学校でサッカーやるの嫌です」

 こんなことがあったら、そうだよな。

「原口の好きにして。これからは放課後は僕と遊ぼう。僕はいつでも保健室にいるから」

「えー先輩、教室いないんですか?」

 無理に笑ってくれる原口を見て、胸が痛んだ。