以前、葵の母に見られていたが、葵の親と自分の家族は許容範囲らしい。「あいかわらず、仲良しね」って母は笑っていた。
 そのことを思い出した。

 ……勘違いしそうになる。

 両想いなのではないだろうかと思ってしまう。

 ……律は本性が出せる相手に執着しているだけだ。

 自分自身に言い聞かせる。

「律以外にする相手はいねーよ」

「そうじゃなくて。僕だけの特権だから、他の人に頼まれてもやらないって約束して?」

「わかった、わかった。約束するから」

 葵は律の髪を雑に撫ぜた。

 それをしても許されるのは葵だけだった。

「髪の毛、帰りに直してよ」

「わかってる。いつも通りにすればいいだろ?」

「うん。そうしてね」

 律は甘えるような声を出す。

 ……かわいい。

 外見はイケメンと呼ばれるのにふさわしいのにもかかわらず、葵にだけ見せる甘えん坊の一面は幼く感じられ、かわいいと思ってしまう。

「……あの二人にも、してるの?」

「なにが?」

「あの二人にも頭を撫ぜるの? 僕、それだったら、嫌なんだけど」

 律は嫉妬深い。

 独占力が強く、執着心も強い。

 特定の彼女を作らないのは依存してしまうとわかっているからなのか。依存先を見つけてしまっているから、必要ないと思っているのか、わからなかった。

 ……拗ねてるのか。

 葵は鈍かった。

 律が嫉妬していることに気づいていない。

 ……教室ではしゃぎすぎたかな。

 反省をする。

 楽しくなって、つい、互いに触れ合ってしまっていた。

「しねーよ」

 葵は想像をしてしまった。

 想像だけでもうっとうしい。武は素直に受け入れるだろうし、浩二は心底嫌そうな眼を向けてくるだろう。