追放された万能補助術師、辺境でスローライフを満喫しつつ気づけば最強パーティが集まっていました

 王都の広間には、緊張と嘲笑が入り混じっていた。
 玉座の前で、俺――アルト・グランヴェルは冒険者仲間たちに取り囲まれている。

「アルト、お前の【補助魔法】なんて、誰でもできる下位スキルだ。もう要らない」

 剣士のリーダー、ダリウスが冷たく言い放った。
 彼の手には俺と交わした冒険契約書があり、豪快に破り捨てられる。

 その音は、俺の未来が断ち切られる音に聞こえた。

「でも、俺がいたからこそ全滅せずに済んだはずだ。毒も呪いも解除したし、攻撃力も倍増させて――」

「言い訳か? ただの裏方じゃねえか!」
「そうだそうだ! お前の魔法なんて、気休め程度よ!」

 仲間たちは口々に罵声を浴びせる。
 昨日まで笑い合っていた連中が、まるで最初から俺を疎んでいたかのように。

 王都の冒険者ギルド長すら、眉をひそめて言った。
「アルト、お前は“凡庸”だ。もっと華やかな者はいくらでもいる。……追放は妥当だろう」

 ――ああ、俺は本当に役立たずなのか。
 胸の奥がきしむ。

 けれど、同時にふと笑みがこぼれた。

「わかった。じゃあ出ていくよ。……その代わり、二度と俺を頼るなよ」

 その一言で、広間がざわめく。だが俺は振り返らない。

 王都を離れ、馬車に揺られる。
 行き先は、地図の隅に小さく記されていた辺境の村フィオラ。
 魔物の被害が絶えず、王都からは見捨てられていると噂の土地。

 だが、そこにこそ俺の居場所がある気がした。

「……ようやく静かに暮らせる」

 道中、俺は小さく呟いた。
 人々を助けたい、戦場の最前線で役立ちたいと願っていた昔の自分はもういない。
 これからは畑を耕し、必要なら小さな魔法で隣人を助ける。
 そんなささやかな生活を夢見ていた。

 ――けれど、運命はあまりに皮肉だった。

 村へ着いた俺を出迎えたのは、疲れ切った表情の村人たちだった。
 老人が震える声で言う。

「た、助けてくれ……魔物が……森から押し寄せて……!」

 見れば、村の柵は壊れ、負傷者が運び込まれている。
 癒やし手はおらず、皆が絶望に沈んでいた。

「補助魔法しか……使えないんだが」

 俺がためらいながら言うと、老人は必死に縋りついた。

「いいんだ! どんな魔法でもいい、力を貸してくれ!」

 その瞬間、俺の胸に再び火が灯る。
 裏切られ、見放されたはずの力。だが、求める者がいるのなら――。

「……わかった。俺に任せろ」

 俺は立ち上がった。

 そして――村の空気が変わる。
 俺の【補助魔法】が発動し、傷を負った者たちが一斉に呼吸を取り戻す。
 戦える若者の瞳に光が戻り、村の剣士たちは驚愕する。

「こ、これは……体が軽い……!」
「痛みが消えた……!?」

 俺は小さく笑った。

「役立たず? ――なら見せてやるさ。本当の補助魔法ってやつを」

 こうして俺の、辺境から始まる物語が幕を開けた。