ファミリーレストランにて相談兼議論をこなし、一旦、自宅に戻ろうという事になった。

 俺
「とりあえず今夜も両親が帰ってくるのを待つ、外部からの接触に気をつける、何かあったら連絡をすぐにする、グループラインを立ち上げる、気になる場所をピックアップするってことでいいな?」

 全員
「「了解」」

 瑞葉、由愛と共に自宅へ向かって歩き出す。小林だけは別の方向だ。思えば全員が俺の自宅に集合すれば解散をわざわざしなくてもいいじゃないか、と思わないでもないが、親がもし帰宅したらという期待があって、いつも通りに過ごすことにした。

 瑞葉は独りになるからイヤと言い出したが、寂しくなったら家に来いとフォローしておく。一応、恋人だしな。

 なぜか妹がムクれていたが、いつもの事で慣れた。


 ☆

 家に向かって歩いている最中、瑞葉の逆サイドにいた由愛が、さりげなく俺の腕をとった。そして体を引っ付かせてくる。

「なんだ、怖いのか?」

「うん」

「私も怖いよ」と瑞葉。

 由愛
「誰かの夢の中、か」

 瑞葉
「これからどうなるのかな」

「大丈夫、安心しろよ。俺には何となく分るんだ。脱出経路が。きっと、近いうちに元の世界に帰れるぞ」


 ☆

 家に着き、瑞葉と別れる。また後でなと声をかけておく。

 家に入った妹と俺は、まずは風呂。先に由愛を入れて、次に俺。
黄色いパジャマを着た由愛が出てきて俺に近寄る。髪からシャンプーの香りがした。いい匂いだ。

 ……と鼻の穴を広げていたら由愛に気付かれた。

「女の子の匂いを嗅ぐなんてサイテーっ」

「まて、シャンプーを変えたのかなって思って……あっ」

「一緒の使ってるんだから変えるも何もないでしょ! ばかぁっ」



 俺は制服を脱ぎ、湯船に入りながら思いを馳せる。あの鉱泉の深夜に浮かび上がった()()()()()()、周囲に街灯もない、あぜ道の横にポツンとあり、緑色の光で目立っていた。

 不思議と怪しいという感じはなく、神聖な周辺に溶け込んでいた。

 きっと重要な何かがある筈だ。

 風呂から出ると、部屋着に着替えてから、部屋(わがせいいき)でくつろぐ。

 コンコン

「お兄ちゃん、いいかな?」

「なんだ」

「なんでもない」

 ムッとして踵を返そうとした由愛に慌てて声を掛けなおす。

「マテ、おい、入れよ。お菓子でも食べよう」

「うん」

 しずしずと部屋に入った由愛は、俺の隣に来て座る。

「ねぇねぇ、お兄ちゃん。ここが、もし私の夢の中だったらどうする?」

「どうして、そう思うんだ?」

「だって、私の都合のいい事ばかりだもん」

 夢は基本的に、観ている人の自由度が高く、好き勝手出来ると思われる。飛び跳ねたり、魔法が使えたり。また、例え怖い夢であっても、ぎりぎりで助かるなどの恩恵がある。

「そうだな、木下の件で蹴っ飛ばしたのがタイミングよくピンポイントで股間にヒットして逃げられたからな」

「うん……、それ以外でも、好きな人と二人きりになれる機会が多くあって嬉しかったんだ」

 なにっ小林か! 由愛が好きな人って小林なのかっ! 小林は由愛に一目惚れしてるし、相思相愛、ヤバいぞ、義理の弟が小林になってしまう。呼び方も名字じゃなく、幹夫、ミッキーとでも呼んでやろうか。

「そっか、由愛。お兄ちゃんも嬉しいぞ。元の世界に戻っても幸せなままだぞ。お前から告白するか?」

「私からなんて告白できないよぉ。恥ずかしすぎて死ねるもん」

「なるほどな、それなら行動で示せばいい」

「行動で……、いきなりキスしちゃっても好いの?」

「いや、いきなりキスは駄目だな」
(オレの瑞葉キス体験数をあっという間に小林に抜かれてしまうわ)

「う、うん」

「手を繋ぐ、腕を組む、はオーケー。ハグはキスをしたくなるから禁止な」
(俺が嫉妬するからな。想像するだけで嫌な気分になるぜ)

「ばかっ」


 ☆

 なぜか怒って部屋に行ってしまった由愛をおいて、女心は難しいなと俺はため息をついていた。このざまでは鈍感系主人公そのものだ。

 そして、恋人である瑞葉が自宅に来た。独りで寂しくなったからということで、独りで頑張っていたのは二時間ほどであった。

 俺の部屋へ通し、お茶を入れてくつろぐ。そういえば鉱泉の時の写真をじっくりと見ていなかったな。二人で違和感のあるポイントをチェックしていく。

 視覚と違い、画像では別の見方が出来る。じっくりと違和感のある場所をルーペで探しているように慎重に観察していく。

「瑞葉、何か気づいた点はあるか?」

「そうね、コレなんかどうかしら?」

[二人で仲良く寄り添って湖の畔で記念写真]


「フフフ、ねぇ義孝君、良い感じで写ってるね」

「ラブラブだな」

 今、俺はドキドキしていた。例の”一年に一回”というキス可能な時期として期待が高まっている。

「なぁ、瑞葉。そろそろさ、前回から一年経つんじゃないか?」

「なにが、なの?」

「き、キス」

「え~~~、恥ずかしいよぅ」

 俺は顔を近づけ、瑞葉の唇にロックオン。瑞葉が目をつむる。

 ガチャンと由愛の部屋から音がして、ドタドタ走ってくる謎の人物が、って由愛しかいないが。

「可愛い妹の私が隣の部屋にいるのに、何てことをしようとするんですか! お兄ちゃんは、お兄ちゃんはっ、ばか~っ」

 瑞葉
「由愛ちゃんの”ばかっ”は可愛らしさ破壊力満点ね」

「ぶ~~~、今日はもう寝て下さい。いいですね」

 俺&瑞葉
「「は~い」」

(壁に耳当てて聞いてたな……怪しいポイントを写真で探してただけなのに……)


 ☆

 俺の欲望、それは何なのだろう。寝取られたいという歪んだ欲望のために皆を自分の夢に引き込んだのか? 俺って馬鹿なのか。

 夢の中で独りごちる。