帷は薄く、風はやさしい。蝋燭の炎が帷の模様を透かして、内側の人影をゆらゆらと切り取る。透明舞踏会の初夜。掲示板には、金と物と時間が、音符のように並び、流れ、合流し、やがて静まる。ホールの外側は、広場の石畳。そこに立つ人々の呼吸は揃い、足音は落ち着いている。怒鳴り声はない。代わりに、笑いが小さく跳ねては、帷の裾にもぐって消える。
王太子は正装で現れ、帷の前で立ち止まった。白い手袋を外し、深く頭を下げた。「私は演出を先行させた。以後は透明を受け入れる」。声はよく通るが、抑揚は抑えてある。芝居の癖は残る。だが、今日の呼吸は自分で刻んでいる。
群衆は“ざまぁ”を言わない。代わりに、酒場の合図のような調子で、「働けよ、殿下」と笑う。屈辱ではない。作業指示のトーン。王都が、王太子を“仕事”へ戻した瞬間だった。拍手は短く、靴音は長い。長い靴音が、帷の裾から中へ、中から掲示へ、掲示から孤児院へ、療養所へ、下水道局へ、淡々とつながる。
エレーヌは監査印を掲げ、名誉保全費の導入を正式に告知した。「本日より、侮辱と虚偽の反論手続は『名誉保全費』で立替えます。賃金台帳は本人閲覧権を明文化。証拠は公庫で保全。——香りのしない紙に、香りのしない手続を」。拍手に混じって、ほっとした息の音が幾筋も走る。息の音は、制度の最初の領収印だ。
侍女たちは賃金台帳の閲覧所に並び、指先に紙の粉をつけながら、自分の行を見つける。書記は、閲覧のための細い筆記台を運び、角にゴムを貼って音を殺す。伯爵令嬢は壇上で自らの関与を語り、再発防止の教育に参加する契約を結んだ。契約書の末尾には、リュカの勧めで「羞恥を派手にしないこと」という条項が加わる。羞恥は工程を壊す。控えめな羞恥は、補剛材になる。
ノエミの小さな新聞は、帷の外側を縫うように配られた。「透明舞踏会・初夜——贈与の音は見える」。見出しは地味、写真は帷の揺れと掲示の灯点。紙面は余白が多い。余白は呼吸を増やす。呼吸が増えると、声は小さくても届く。
監査長は、壇上から短く告げた。「本日、この場で『婚約破棄』そのものの違法適否には触れない。だが、手続の誤りは手続で正す。——透明舞踏会は、罰ではなく手続だ」。その一言は、帷より薄く、梁より硬い。
◇
帷の内側では、楽団が低く弦を響かせ、来賓の足取りを暖める。舞踏はない。代わりに、歩行の儀。指定された順路を歩けば、流路の地図が光で浮かぶ。誰の寄付がどの機関へ向かい、どの町角の灯を何日分増やすのか。歩くほど、掲示は意味を持つ記号になり、意味のある記号は、やがて選択になる。それが透明の快楽だ。壊さずに治す快楽。目の前で線が伸び、数字が素直になり、人の顔がゆるむ。
エレーヌは、手続窓口に立ち、初日の小さな渋滞を見守る。渋滞は欠陥ではない。入口が一つしかなかったものに、出口を一つ作ったからだ。出口はもう一つ増やす。紙は薄く、印は濃く、説明は短く。説明の短さは、理解の速度ではなく、誤解の減少に効く。
彼女の横で、リュカが帷の継ぎ目に触れ、目地の馴染みを確かめている。帷は揺れるほどなじむ。「君の帷は、風を入れるようにできてる」と彼は言う。
「風は必要。火を大人しくさせるのは、水ではなく風の場合がある」
「水は後始末が大変だ」
「だから、火の近くに水の費目は置かない。風の費目を置く」
リュカは目を細め、掲示を見上げた。「今日だけで、下水道局の清掃三区画、孤児院の粉乳四十缶、療養所の暖炉の薪十束、読書室の灯り百二十時間。——花輪は、ゼロ」
「香りは帷の上に移した。葉と湿気と、短い詩と」
「詩は免税だったな」
「初回だけね」
リュカは笑った。その笑いは、構造体の隅肉溶接のように、目立たず、強い。
◇
王太子は帷の前に残り、来賓と市民の間を斜めに歩いた。彼は今日、自分の名を売らなかった。代わりに、名のない支援の入口を増やした。入口には小さな牌が立ち、「寄贈:匿名」とだけある。匿名は臆病ではない。最初の一歩に必要な仮名だ。仮名で渡る橋が、常設されるまでの足場になる。
「殿下」と、孤児院の少年が声をかける。制服はよそ行き、袖口は磨耗、靴は磨かれている。「前の祭りのパン、おいしかった。でも、あれ、次の日も食べきれないくらい残ったんだ」
王太子は膝を折り、「ごめん」と言った。「舞台の余りを、君の朝に押しつけた」。少年は首を振る。「あやまらなくていい。今日の灯りのほうが好きだよ」掲示には「学童図書の補修:綴じ直し二十冊」。少年の背丈のところに、灯が一つ増えた。
王太子は首をもたげ、遠くを見た。顔に薄い疲れが浮かぶ。疲れは、演出には似合わない。だが、手続には似合う。疲れを見せることで、他人の疲れが少しだけ軽くなる。そんな効果は、計上が難しい。名誉保全費の末尾に、補助科目として小さく「疲労共有控除」を書き込みたい誘惑を、エレーヌはぐっと飲んだ。科目は増やしすぎると、人が迷う。迷いは手続の敵だ。
◇
夜更け、舞踏会の終章に合わせ、反論の小部屋で一組の面談が行われた。伯爵令嬢と、かつてのライバルの令嬢が、帷越しに互いの影を見ながら椅子に座る。伝えるべき事実、訂正するべき噂、謝罪の言葉。謝罪は、いつだって費目外であるべきだが、謝罪の手続は費目内にあるべきだ。手続の椅子があることで、言葉は自尊を失わない。
「——謝るわ」と伯爵令嬢。「自分のためにやった。愛のためだと言い訳した」
「——許すわ」とライバルの令嬢。「許すのは、私のため」
短い言葉の往復。二人の間に置かれた白布が、揺れずにそこにある。白布は、鼻水にも涙にも使える万能布。万能は役立たないと誤解されがちだが、白布は例外だ。役に立つのに目立たない。目立たないのに、最後まで残る。
面談の終わり、伯爵令嬢は契約書の欄外に小さく追記した。「自らの教育の場における“理想的な謝罪の演出”の禁止」。演出の癖は、非演出の場に漏れやすい。エレーヌは頷き、その欄外に朱で丸を打った。
◇
広場に戻ると、ノエミが肩で息をしながら走り寄ってきた。「号外。——王太子、透明を受け入れる」。写真は深い礼の瞬間。ノエミは次いで、もう一枚の紙を差し出す。「侍女連盟からの短い声明よ。『台帳の明かりが点いた夜、私たちは顔を上げた』」。行間は広く、文字は少なく、余白は多い。余白の多い声明は、吠えない代わりに、日持ちがする。
「詩人協会は?」とエレーヌ。
「『帷の揺れに短歌の故郷を見る』。——免税だって」
「初回だけね」と、また言ってしまう。制度の合言葉みたいになってきた。合言葉は便利だが、制度が合言葉に依存し始めたら危険信号。明日には別の言葉を見つけたい。
リュカが掲示の下で腕を組み、少しだけ眉を下げている。「梁の鳴き方が、昼から夜へと変わった。昼は乾いた金属音、夜は湿った木の音。どちらも健全だ」
「健全に鳴く梁は、詩の楽器ね」
「楽器の調律に、君の算盤は向いてる」
「褒め言葉として受け取る」
◇
舞踏会が終わる頃、帷の揺れは落ち着き、掲示の灯は小さくなった。来賓は散り、市民は帰路につき、広場は掃除の人々が占めた。掃除は儀式だ。儀式が終わると、街は眠れる。眠れる街は、翌朝に強い。
エレーヌは監査院の臨時窓口で最後の署名を済ませ、印を押し、封をして、箱に入れる。箱の鍵は、タニアが持つ。タニアは鍵を胸のポケットに落とし、「嬢ちゃん、角砂糖」と言って指先に一粒載せた。甘さは制度の入口に撒く砂だ——彼女が覚えた、タニア語のことわざが、またひとつ増える。
「帰る?」とタニア。
「少し歩くわ」
帷の外へ、石畳へ、橋へ。橋の上は、風が通り道にしている。川面に、帷の名残の光が細く揺れる。エレーヌは欄干に掌を置いた。鉄は冷たいが、脈を吸うほど冷たくはない。人の脈と都市の脈は、偶に同期する。同期は祝祭で、長く続かないのが健康だ。
「君は“ざまぁ”を奪った」と、横に立ったリュカが言った。声は柔らかく、背丈は欄干と同じくらい。彼は肩で風を受け、頬に風を通す顔をしている。構造体に向かうときの顔ではない。人に向かうときの顔だ。
「違うわ。別の快楽に置き換えたの。壊さないで治す快楽に」
リュカは口元を少し上げ、「ならご褒美に、構造の外のことを一つ教えてくれ。恋の定義」と言った。
エレーヌは言いかけて、黙る。定義は武器になる。安易な定義は、人を傷つける。黙った方がいいことは、いくらでもある。けれど、問われたときに、逃げ続けると、言葉はいつか腰を痛める。逃げるのにも筋肉が要るから。
「恋は——」と彼女はゆっくり言う。「帳尻が合わない、唯一の費目」
「じゃあ、赤字でいい」
「赤字は嫌い」
「赤字を嫌う人に、都市の梁は任せたい」
エレーヌは笑った。笑いは短く、息は長い。そこで、彼の手が、そっと彼女の指に触れる。梁は荷重がなければ立たない——彼がいつも言う言葉だ。けれど、今、触れた指は荷重ではなく、支点だった。支点がひとつ増えると、梁の可能性が増える。可能性は方程式の解の数のように増え、都市は選択肢を得る。選択肢は、暴力の敵だ。
「君は今日、都市の支点を増やした」とリュカ。「帷という支点、掲示という支点、椅子という支点。支点が多い都市は、壊れにくい」
「支点は目立たない」
「目立つ支点は柱だ。目立たないのが支点の礼儀」
「礼儀にも費目はあるのかしら」
「礼儀の費目は、友人割引で」
「非課税」
彼は小さく首を振って笑い、言葉を慎重に置き換えるように、彼女の頬へ顔を寄せた。口づけは、帷の揺れのように短く、梁の鳴きのように深い。橋の上の口づけ。鉄は冷たく、川は滑らかで、夜は長い。二人の影は、橋の欄干にかかってひとつになりかけ、でも完全には重ならない。完全に重ならないのが、支え合いの形だ。少しずれるところに、風が通る。風が通るところに、都市は息をする。
帷の向こうで音楽が続く。低い弦と、遠い笛。足音はもうまばらで、掃除の音が主旋律だ。世界は透明になり、なお美しくぼやけていた。ぼやけは欺瞞ではない。過剰な焦点を、いったんほどく。ほどかれた焦点の周りで、人は互いを見失わずに済む。見失わないことは、愛に似ている。愛は定義よりも、迷子の数で測られるのかもしれない。迷子が少ない夜は、良い制度の夜だ。
◇
翌朝。透明舞踏会の成績表は、監査院の掲示板に貼り出された。寄付総額、支出総額、見栄控除の推定値、反論手続の件数と決定までの平均日数、誤情報訂正の到達率。数字の間に、短い詩が挟まれている。詩は免税。詩の免税は、制度の冗談であり、本気だ。冗談の中で本気を守るのが、王都流。
王太子は、王宮の礼拝堂で短い祈りを捧げ、「花輪をやめ、帷の上の葉に換える」と宣言した。葉は香るが、派手に香らない。香りの控え目さは、梁の寿命を伸ばす。祈りを終えた王太子は外へ出て、記者に問われ、「屈辱ではない」と答えた。「仕事だ」。彼の表情は薄く、声はまっすぐだった。まっすぐな声は、疲れの後で出ることがある。
ノエミは本紙に小さく書いた。「王家、帷の設置費を拠出」。その下に、もっと小さく、「詩人協会、帷の折り目に短歌を刻む許可を得る」。伝統は保存対象、贈与は運用対象——昨日の返書の文言が、実務に下りてきた音がした。
午後、監査長が判決を読み上げた。「婚約破棄は、手続の不備と不当な演出の介入により、当初の宣言は無効。改めて、当事者双方の同意に基づく『破棄』を確認する。——王太子側には、名誉保全費の一定期間の特別納付と、透明舞踏会への継続的参加を命じる」。広場はざわめき、しかし罵声はない。罵声の代わりに、段取りが動く。段取りが動く広場は、賢い。
伯爵令嬢は、その足で孤児院へ向かい、子どもたちに手紙の書き方を教えた。「謝罪の手紙ではなく、お願いの手紙」。お願いは、手続の入り口だ。入り口が上手い子どもは、迷子になりにくい。迷子が少ない街は、夜が静かだ。
侍女たちは賃金台帳の差異を一つずつ潰し、互助金の規約の読解会を開いた。読解会の輪の外側に、エレーヌは立たない。立つべきは、当事者の声の範囲だ。範囲の外から手を出す手は、善意でも邪魔になる。手の出し方の費目は、いずれ設定が必要だろう。「介入控除」。耳慣れない名は、まだノートの端に眠らせておく。
◇
夜。再び、橋。帷の名残の光はもう薄く、川の匂いが勝っている。エレーヌは砂時計を取り出し、横に倒した。砂は止まる。止まった砂の上に、薄い葉が一枚落ちる。帷の上から外れた、小さな葉。葉脈は、都市の流路図に似ている。似ているだけで、同じではない。似ているだけのものをもって制度に押し込むのは、悪い癖だ。だから、葉は葉として見ておく。
「今日の君は、少し軽い」とリュカ。
「軽い?」
「荷重じゃない。心のねじり剛性が、昨日より少し柔らかい」
「褒め言葉として受け取る」
「もちろん」
沈黙は、橋の上では音になる。川の音と風の音と鉄の音。三つの音が交差する場所にいるとき、人は言葉を選ぶ。選ばれた言葉は、今日の石畳に残る。明日の石畳には残らない。残らないことは、悪ではない。残らないから、毎日やる意味がある。
「恋の定義、訂正していい?」とエレーヌ。
「どうぞ」
「『帳尻が合わない唯一の費目』。——あれ、半分嘘」
「どの半分?」
「唯一じゃない。芸術も、教育も、公共の灯も、帳尻は合わない。合わないものを支えるのが、都市の文化。恋は、その中でいちばん、名付けるのが下手な費目」
「名付けの下手さは、税制の敵だ」
「だから、免税」
「初回だけ?」
「二回目まで」
リュカは笑って、欄干を指で二度叩いた。「二回目まで免税。三回目から課税。——君の恋は、優遇措置の多い制度だ」
「制度は甘やかすと腐る」
「じゃあ、俺が腐らないように梁で支える」
「頼んだ」
彼は彼女の手を取り、もう一度、短く口づけた。今度の口づけは、最初よりも軽いが、余白が広い。余白は、次の行のための布置だ。布置がうまい文章は、息が続く。息が続く都市は、夜を静かに越える。
◇
数日後。透明舞踏会は定期化され、帷の折り目には短歌が増え、掲示には「見栄控除:中」「疲労共有控除:小」といった灯りが常連になった。名誉保全費の窓口には、反論の相談だけでなく、「どう話せば傷つけずに済むか」の相談も増えた。相談は“未来の反論の削減”。未来を少しずつ軽くする仕事ほど、評価が遅い。遅い評価は、長持ちする。
王太子は、広場でときどき子どもにからかわれ、ときどき老人に握手を求められ、ときどき詩人に短歌の助詞を直される。彼は笑い、時には真面目に聞き、時には反論する。反論は喧嘩ではない。反論が喧嘩に変わる地点には、椅子が置かれた。座ると、人はだいたい、声量を下げる。
ノエミは社説に書いた。「ざまぁの代替案は、破壊の快楽を奪わない。別の快楽を教える。線が伸びるのを見ること。灯りが増えるのを数えること。——視野が増えると、怒りの居場所は広くなり、怒りは座る椅子を見つける」。社説は長くない。長くない文が、長いあいだ読まれることがある。
監査長は、記者会見で言った。「制度は、人を優しくしない。人が制度を優しく使う」。短いが、厳しい。厳しさは、やさしさの親戚だ。親戚づきあいは、費目外。だが、帳外の記憶には、制度以上の強度がある。
◇
大団円という言葉は、たいてい舞台の外で決まる。舞台の上では、いつも誰かが片付けをしている。片付けは労働で、労働は芸術の最良の鑑賞だ。帷の向こうで音楽が終わり、灯りが落ち、床の砂が掃かれ、椅子が積み上がる。積み上がった椅子は、翌朝の会議でまたほどかれ、人が座り、話し、決め、歩く。透明は続く。続くことが、いちばんの大団円だ。
橋の上で、二人はもう一度だけ立ち止まった。川は変わらず流れ、帷は次の夜のために畳まれ、掲示の灯は格納され、白布は洗われて干され、角砂糖は補充され、名誉保全費の箱は鍵がかけられる。鍵はタニアの胸ポケットにある。胸ポケットは、制度と詩の間の、いちばん安全な場所だ。
「終わった?」とリュカ。
「終わらない」とエレーヌ。「終わらないように作ったから」
「じゃあ、始まった?」
「始まりも、終わりも、今日の欄外に小さく書いた」
「なんて」
「『橋の上の口づけ』」
「費目は?」
「非課税。……でも、記録は残す」
川面に、遠い灯がひとつ落ちたように見えた。落ちたのではない。映り込んだだけだ。映り込みは、現実を甘くする。甘くしすぎないように、彼女は砂時計を立て直し、珠をひとつ、音を立てて弾いた。音は小さかったが、はっきりしていた。都市のどこかで、それに応じる微かな鳴りがあった。梁の鳴りは、挨拶だ。挨拶が交わされている間、王都は持ちこたえる。持ちこたえる都市は美しい。美しさの費目は、やっぱりない。だから、詩に任せる。詩は免税。初回だけ——では、ない。
二人は橋を渡り始めた。欄干の影が、二人分、長く延びた。延びて、重なりかけて、また離れる。離れるときに、支え合う。支え合うときに、離しておく。その距離感を、橋はよく知っている。橋は、そのために作られたからだ。橋の上の口づけは、けっして儀式ではない。けれど、都市は、こういう非公式をよく覚えている。覚えているから、次の夜も安心して眠れる。眠りから醒めて、また帷が立ち、線が伸び、灯が増え、人が歩き、笑い、時々泣き、そして働く。
働けよ、殿下。働けよ、私たち。ざまぁの代わりに、透明を。罰の代わりに、手続を。叫びの代わりに、線を。花輪の代わりに、帷の葉を。恋の定義の代わりに、橋の上の口づけを——非課税で、記録つきで。
王太子は正装で現れ、帷の前で立ち止まった。白い手袋を外し、深く頭を下げた。「私は演出を先行させた。以後は透明を受け入れる」。声はよく通るが、抑揚は抑えてある。芝居の癖は残る。だが、今日の呼吸は自分で刻んでいる。
群衆は“ざまぁ”を言わない。代わりに、酒場の合図のような調子で、「働けよ、殿下」と笑う。屈辱ではない。作業指示のトーン。王都が、王太子を“仕事”へ戻した瞬間だった。拍手は短く、靴音は長い。長い靴音が、帷の裾から中へ、中から掲示へ、掲示から孤児院へ、療養所へ、下水道局へ、淡々とつながる。
エレーヌは監査印を掲げ、名誉保全費の導入を正式に告知した。「本日より、侮辱と虚偽の反論手続は『名誉保全費』で立替えます。賃金台帳は本人閲覧権を明文化。証拠は公庫で保全。——香りのしない紙に、香りのしない手続を」。拍手に混じって、ほっとした息の音が幾筋も走る。息の音は、制度の最初の領収印だ。
侍女たちは賃金台帳の閲覧所に並び、指先に紙の粉をつけながら、自分の行を見つける。書記は、閲覧のための細い筆記台を運び、角にゴムを貼って音を殺す。伯爵令嬢は壇上で自らの関与を語り、再発防止の教育に参加する契約を結んだ。契約書の末尾には、リュカの勧めで「羞恥を派手にしないこと」という条項が加わる。羞恥は工程を壊す。控えめな羞恥は、補剛材になる。
ノエミの小さな新聞は、帷の外側を縫うように配られた。「透明舞踏会・初夜——贈与の音は見える」。見出しは地味、写真は帷の揺れと掲示の灯点。紙面は余白が多い。余白は呼吸を増やす。呼吸が増えると、声は小さくても届く。
監査長は、壇上から短く告げた。「本日、この場で『婚約破棄』そのものの違法適否には触れない。だが、手続の誤りは手続で正す。——透明舞踏会は、罰ではなく手続だ」。その一言は、帷より薄く、梁より硬い。
◇
帷の内側では、楽団が低く弦を響かせ、来賓の足取りを暖める。舞踏はない。代わりに、歩行の儀。指定された順路を歩けば、流路の地図が光で浮かぶ。誰の寄付がどの機関へ向かい、どの町角の灯を何日分増やすのか。歩くほど、掲示は意味を持つ記号になり、意味のある記号は、やがて選択になる。それが透明の快楽だ。壊さずに治す快楽。目の前で線が伸び、数字が素直になり、人の顔がゆるむ。
エレーヌは、手続窓口に立ち、初日の小さな渋滞を見守る。渋滞は欠陥ではない。入口が一つしかなかったものに、出口を一つ作ったからだ。出口はもう一つ増やす。紙は薄く、印は濃く、説明は短く。説明の短さは、理解の速度ではなく、誤解の減少に効く。
彼女の横で、リュカが帷の継ぎ目に触れ、目地の馴染みを確かめている。帷は揺れるほどなじむ。「君の帷は、風を入れるようにできてる」と彼は言う。
「風は必要。火を大人しくさせるのは、水ではなく風の場合がある」
「水は後始末が大変だ」
「だから、火の近くに水の費目は置かない。風の費目を置く」
リュカは目を細め、掲示を見上げた。「今日だけで、下水道局の清掃三区画、孤児院の粉乳四十缶、療養所の暖炉の薪十束、読書室の灯り百二十時間。——花輪は、ゼロ」
「香りは帷の上に移した。葉と湿気と、短い詩と」
「詩は免税だったな」
「初回だけね」
リュカは笑った。その笑いは、構造体の隅肉溶接のように、目立たず、強い。
◇
王太子は帷の前に残り、来賓と市民の間を斜めに歩いた。彼は今日、自分の名を売らなかった。代わりに、名のない支援の入口を増やした。入口には小さな牌が立ち、「寄贈:匿名」とだけある。匿名は臆病ではない。最初の一歩に必要な仮名だ。仮名で渡る橋が、常設されるまでの足場になる。
「殿下」と、孤児院の少年が声をかける。制服はよそ行き、袖口は磨耗、靴は磨かれている。「前の祭りのパン、おいしかった。でも、あれ、次の日も食べきれないくらい残ったんだ」
王太子は膝を折り、「ごめん」と言った。「舞台の余りを、君の朝に押しつけた」。少年は首を振る。「あやまらなくていい。今日の灯りのほうが好きだよ」掲示には「学童図書の補修:綴じ直し二十冊」。少年の背丈のところに、灯が一つ増えた。
王太子は首をもたげ、遠くを見た。顔に薄い疲れが浮かぶ。疲れは、演出には似合わない。だが、手続には似合う。疲れを見せることで、他人の疲れが少しだけ軽くなる。そんな効果は、計上が難しい。名誉保全費の末尾に、補助科目として小さく「疲労共有控除」を書き込みたい誘惑を、エレーヌはぐっと飲んだ。科目は増やしすぎると、人が迷う。迷いは手続の敵だ。
◇
夜更け、舞踏会の終章に合わせ、反論の小部屋で一組の面談が行われた。伯爵令嬢と、かつてのライバルの令嬢が、帷越しに互いの影を見ながら椅子に座る。伝えるべき事実、訂正するべき噂、謝罪の言葉。謝罪は、いつだって費目外であるべきだが、謝罪の手続は費目内にあるべきだ。手続の椅子があることで、言葉は自尊を失わない。
「——謝るわ」と伯爵令嬢。「自分のためにやった。愛のためだと言い訳した」
「——許すわ」とライバルの令嬢。「許すのは、私のため」
短い言葉の往復。二人の間に置かれた白布が、揺れずにそこにある。白布は、鼻水にも涙にも使える万能布。万能は役立たないと誤解されがちだが、白布は例外だ。役に立つのに目立たない。目立たないのに、最後まで残る。
面談の終わり、伯爵令嬢は契約書の欄外に小さく追記した。「自らの教育の場における“理想的な謝罪の演出”の禁止」。演出の癖は、非演出の場に漏れやすい。エレーヌは頷き、その欄外に朱で丸を打った。
◇
広場に戻ると、ノエミが肩で息をしながら走り寄ってきた。「号外。——王太子、透明を受け入れる」。写真は深い礼の瞬間。ノエミは次いで、もう一枚の紙を差し出す。「侍女連盟からの短い声明よ。『台帳の明かりが点いた夜、私たちは顔を上げた』」。行間は広く、文字は少なく、余白は多い。余白の多い声明は、吠えない代わりに、日持ちがする。
「詩人協会は?」とエレーヌ。
「『帷の揺れに短歌の故郷を見る』。——免税だって」
「初回だけね」と、また言ってしまう。制度の合言葉みたいになってきた。合言葉は便利だが、制度が合言葉に依存し始めたら危険信号。明日には別の言葉を見つけたい。
リュカが掲示の下で腕を組み、少しだけ眉を下げている。「梁の鳴き方が、昼から夜へと変わった。昼は乾いた金属音、夜は湿った木の音。どちらも健全だ」
「健全に鳴く梁は、詩の楽器ね」
「楽器の調律に、君の算盤は向いてる」
「褒め言葉として受け取る」
◇
舞踏会が終わる頃、帷の揺れは落ち着き、掲示の灯は小さくなった。来賓は散り、市民は帰路につき、広場は掃除の人々が占めた。掃除は儀式だ。儀式が終わると、街は眠れる。眠れる街は、翌朝に強い。
エレーヌは監査院の臨時窓口で最後の署名を済ませ、印を押し、封をして、箱に入れる。箱の鍵は、タニアが持つ。タニアは鍵を胸のポケットに落とし、「嬢ちゃん、角砂糖」と言って指先に一粒載せた。甘さは制度の入口に撒く砂だ——彼女が覚えた、タニア語のことわざが、またひとつ増える。
「帰る?」とタニア。
「少し歩くわ」
帷の外へ、石畳へ、橋へ。橋の上は、風が通り道にしている。川面に、帷の名残の光が細く揺れる。エレーヌは欄干に掌を置いた。鉄は冷たいが、脈を吸うほど冷たくはない。人の脈と都市の脈は、偶に同期する。同期は祝祭で、長く続かないのが健康だ。
「君は“ざまぁ”を奪った」と、横に立ったリュカが言った。声は柔らかく、背丈は欄干と同じくらい。彼は肩で風を受け、頬に風を通す顔をしている。構造体に向かうときの顔ではない。人に向かうときの顔だ。
「違うわ。別の快楽に置き換えたの。壊さないで治す快楽に」
リュカは口元を少し上げ、「ならご褒美に、構造の外のことを一つ教えてくれ。恋の定義」と言った。
エレーヌは言いかけて、黙る。定義は武器になる。安易な定義は、人を傷つける。黙った方がいいことは、いくらでもある。けれど、問われたときに、逃げ続けると、言葉はいつか腰を痛める。逃げるのにも筋肉が要るから。
「恋は——」と彼女はゆっくり言う。「帳尻が合わない、唯一の費目」
「じゃあ、赤字でいい」
「赤字は嫌い」
「赤字を嫌う人に、都市の梁は任せたい」
エレーヌは笑った。笑いは短く、息は長い。そこで、彼の手が、そっと彼女の指に触れる。梁は荷重がなければ立たない——彼がいつも言う言葉だ。けれど、今、触れた指は荷重ではなく、支点だった。支点がひとつ増えると、梁の可能性が増える。可能性は方程式の解の数のように増え、都市は選択肢を得る。選択肢は、暴力の敵だ。
「君は今日、都市の支点を増やした」とリュカ。「帷という支点、掲示という支点、椅子という支点。支点が多い都市は、壊れにくい」
「支点は目立たない」
「目立つ支点は柱だ。目立たないのが支点の礼儀」
「礼儀にも費目はあるのかしら」
「礼儀の費目は、友人割引で」
「非課税」
彼は小さく首を振って笑い、言葉を慎重に置き換えるように、彼女の頬へ顔を寄せた。口づけは、帷の揺れのように短く、梁の鳴きのように深い。橋の上の口づけ。鉄は冷たく、川は滑らかで、夜は長い。二人の影は、橋の欄干にかかってひとつになりかけ、でも完全には重ならない。完全に重ならないのが、支え合いの形だ。少しずれるところに、風が通る。風が通るところに、都市は息をする。
帷の向こうで音楽が続く。低い弦と、遠い笛。足音はもうまばらで、掃除の音が主旋律だ。世界は透明になり、なお美しくぼやけていた。ぼやけは欺瞞ではない。過剰な焦点を、いったんほどく。ほどかれた焦点の周りで、人は互いを見失わずに済む。見失わないことは、愛に似ている。愛は定義よりも、迷子の数で測られるのかもしれない。迷子が少ない夜は、良い制度の夜だ。
◇
翌朝。透明舞踏会の成績表は、監査院の掲示板に貼り出された。寄付総額、支出総額、見栄控除の推定値、反論手続の件数と決定までの平均日数、誤情報訂正の到達率。数字の間に、短い詩が挟まれている。詩は免税。詩の免税は、制度の冗談であり、本気だ。冗談の中で本気を守るのが、王都流。
王太子は、王宮の礼拝堂で短い祈りを捧げ、「花輪をやめ、帷の上の葉に換える」と宣言した。葉は香るが、派手に香らない。香りの控え目さは、梁の寿命を伸ばす。祈りを終えた王太子は外へ出て、記者に問われ、「屈辱ではない」と答えた。「仕事だ」。彼の表情は薄く、声はまっすぐだった。まっすぐな声は、疲れの後で出ることがある。
ノエミは本紙に小さく書いた。「王家、帷の設置費を拠出」。その下に、もっと小さく、「詩人協会、帷の折り目に短歌を刻む許可を得る」。伝統は保存対象、贈与は運用対象——昨日の返書の文言が、実務に下りてきた音がした。
午後、監査長が判決を読み上げた。「婚約破棄は、手続の不備と不当な演出の介入により、当初の宣言は無効。改めて、当事者双方の同意に基づく『破棄』を確認する。——王太子側には、名誉保全費の一定期間の特別納付と、透明舞踏会への継続的参加を命じる」。広場はざわめき、しかし罵声はない。罵声の代わりに、段取りが動く。段取りが動く広場は、賢い。
伯爵令嬢は、その足で孤児院へ向かい、子どもたちに手紙の書き方を教えた。「謝罪の手紙ではなく、お願いの手紙」。お願いは、手続の入り口だ。入り口が上手い子どもは、迷子になりにくい。迷子が少ない街は、夜が静かだ。
侍女たちは賃金台帳の差異を一つずつ潰し、互助金の規約の読解会を開いた。読解会の輪の外側に、エレーヌは立たない。立つべきは、当事者の声の範囲だ。範囲の外から手を出す手は、善意でも邪魔になる。手の出し方の費目は、いずれ設定が必要だろう。「介入控除」。耳慣れない名は、まだノートの端に眠らせておく。
◇
夜。再び、橋。帷の名残の光はもう薄く、川の匂いが勝っている。エレーヌは砂時計を取り出し、横に倒した。砂は止まる。止まった砂の上に、薄い葉が一枚落ちる。帷の上から外れた、小さな葉。葉脈は、都市の流路図に似ている。似ているだけで、同じではない。似ているだけのものをもって制度に押し込むのは、悪い癖だ。だから、葉は葉として見ておく。
「今日の君は、少し軽い」とリュカ。
「軽い?」
「荷重じゃない。心のねじり剛性が、昨日より少し柔らかい」
「褒め言葉として受け取る」
「もちろん」
沈黙は、橋の上では音になる。川の音と風の音と鉄の音。三つの音が交差する場所にいるとき、人は言葉を選ぶ。選ばれた言葉は、今日の石畳に残る。明日の石畳には残らない。残らないことは、悪ではない。残らないから、毎日やる意味がある。
「恋の定義、訂正していい?」とエレーヌ。
「どうぞ」
「『帳尻が合わない唯一の費目』。——あれ、半分嘘」
「どの半分?」
「唯一じゃない。芸術も、教育も、公共の灯も、帳尻は合わない。合わないものを支えるのが、都市の文化。恋は、その中でいちばん、名付けるのが下手な費目」
「名付けの下手さは、税制の敵だ」
「だから、免税」
「初回だけ?」
「二回目まで」
リュカは笑って、欄干を指で二度叩いた。「二回目まで免税。三回目から課税。——君の恋は、優遇措置の多い制度だ」
「制度は甘やかすと腐る」
「じゃあ、俺が腐らないように梁で支える」
「頼んだ」
彼は彼女の手を取り、もう一度、短く口づけた。今度の口づけは、最初よりも軽いが、余白が広い。余白は、次の行のための布置だ。布置がうまい文章は、息が続く。息が続く都市は、夜を静かに越える。
◇
数日後。透明舞踏会は定期化され、帷の折り目には短歌が増え、掲示には「見栄控除:中」「疲労共有控除:小」といった灯りが常連になった。名誉保全費の窓口には、反論の相談だけでなく、「どう話せば傷つけずに済むか」の相談も増えた。相談は“未来の反論の削減”。未来を少しずつ軽くする仕事ほど、評価が遅い。遅い評価は、長持ちする。
王太子は、広場でときどき子どもにからかわれ、ときどき老人に握手を求められ、ときどき詩人に短歌の助詞を直される。彼は笑い、時には真面目に聞き、時には反論する。反論は喧嘩ではない。反論が喧嘩に変わる地点には、椅子が置かれた。座ると、人はだいたい、声量を下げる。
ノエミは社説に書いた。「ざまぁの代替案は、破壊の快楽を奪わない。別の快楽を教える。線が伸びるのを見ること。灯りが増えるのを数えること。——視野が増えると、怒りの居場所は広くなり、怒りは座る椅子を見つける」。社説は長くない。長くない文が、長いあいだ読まれることがある。
監査長は、記者会見で言った。「制度は、人を優しくしない。人が制度を優しく使う」。短いが、厳しい。厳しさは、やさしさの親戚だ。親戚づきあいは、費目外。だが、帳外の記憶には、制度以上の強度がある。
◇
大団円という言葉は、たいてい舞台の外で決まる。舞台の上では、いつも誰かが片付けをしている。片付けは労働で、労働は芸術の最良の鑑賞だ。帷の向こうで音楽が終わり、灯りが落ち、床の砂が掃かれ、椅子が積み上がる。積み上がった椅子は、翌朝の会議でまたほどかれ、人が座り、話し、決め、歩く。透明は続く。続くことが、いちばんの大団円だ。
橋の上で、二人はもう一度だけ立ち止まった。川は変わらず流れ、帷は次の夜のために畳まれ、掲示の灯は格納され、白布は洗われて干され、角砂糖は補充され、名誉保全費の箱は鍵がかけられる。鍵はタニアの胸ポケットにある。胸ポケットは、制度と詩の間の、いちばん安全な場所だ。
「終わった?」とリュカ。
「終わらない」とエレーヌ。「終わらないように作ったから」
「じゃあ、始まった?」
「始まりも、終わりも、今日の欄外に小さく書いた」
「なんて」
「『橋の上の口づけ』」
「費目は?」
「非課税。……でも、記録は残す」
川面に、遠い灯がひとつ落ちたように見えた。落ちたのではない。映り込んだだけだ。映り込みは、現実を甘くする。甘くしすぎないように、彼女は砂時計を立て直し、珠をひとつ、音を立てて弾いた。音は小さかったが、はっきりしていた。都市のどこかで、それに応じる微かな鳴りがあった。梁の鳴りは、挨拶だ。挨拶が交わされている間、王都は持ちこたえる。持ちこたえる都市は美しい。美しさの費目は、やっぱりない。だから、詩に任せる。詩は免税。初回だけ——では、ない。
二人は橋を渡り始めた。欄干の影が、二人分、長く延びた。延びて、重なりかけて、また離れる。離れるときに、支え合う。支え合うときに、離しておく。その距離感を、橋はよく知っている。橋は、そのために作られたからだ。橋の上の口づけは、けっして儀式ではない。けれど、都市は、こういう非公式をよく覚えている。覚えているから、次の夜も安心して眠れる。眠りから醒めて、また帷が立ち、線が伸び、灯が増え、人が歩き、笑い、時々泣き、そして働く。
働けよ、殿下。働けよ、私たち。ざまぁの代わりに、透明を。罰の代わりに、手続を。叫びの代わりに、線を。花輪の代わりに、帷の葉を。恋の定義の代わりに、橋の上の口づけを——非課税で、記録つきで。



