地中海の青い輝きが、陽光にきらめくイタリア風の団地。白い壁の集合住宅が並ぶこの街は、白城の外交官たちが暮らす一時的な拠点だ。朝日はオフの日を利用して、キースのプライベートに密着することを思いついた。理由?
「キースくんの日常、もっと知りたいな! 寂しいじゃん、僕がいないと!」と、いつもの甘えん坊ぶりを発揮したのだ。
朝日は水色と白のセーラー服を着こなし、短パンに白のローファーを履いていた。やんちゃな保安官とは思えない、天真爛漫なコーディネート。白い髪を軽く揺らし、白色の瞳を輝かせてキースの部屋のドアをノックする。
「キースーくーん! 朝だよ、開けて! 今日は僕が君のマネージャーさ!」
ドアが開き、キースが現れた。カジュアルなシャツ姿の彼は、静かに微笑む。
「朝日さん、そんな格好で……外を歩くんですか? 目立ちますよ」
優しい声だが、クールな距離感が残る。内面の複雑さ――空っぽな自分を責める葛藤が、今日も彼を覆っていた。
「目立ってなんぼじゃん? ほら、出かけよう! まずは市場で朝ごはん!」
朝日はキースの手を引っ張り、団地の階段を駆け下りる。地中海の風がセーラー服の裾を翻し、白いローファーが石畳を軽快に叩く。キースは戸惑いつつも、朝日の明るさに引っ張られるように従った。
市場は活気に満ち、オリーブや新鮮な魚の香りが漂う。朝日は露店でパンを買い、キースに分け与えながら密着取材を始める。
「キースくんの朝食は? 僕みたいにガッツリ食うタイプ? それとも繊細派?」
やんちゃに質問を連発し、寂しがり屋の目でキースを見つめる。
キースはパンをかじりながら、穏やかに答える。
「……普通です。自分なんて、空っぽだから、何を食べても変わらない気がして」
本心がぽろりとこぼれた。根暗な影が顔を出し、普段の温厚さが少しずつ剥がれていく。
朝日は動きを止め、キースの肩に腕を回した。
「空っぽ? バカ言ってさぁ。君の優しさ、僕は知ってる。ピンチの時だって、野獣みたいに強くなるじゃん? それが君の魅力さ。僕はそんな君が好きだよ。甘えていいよ、寂しい時はね」
ムードメーカーらしい明るさで抱きつき、白い髪をキースの頰に寄せる。
その瞬間、キースの瞳に変化が訪れた。コントロールの効かない「野獣人格」が、わずかに疼く。冷酷な冷たさが混じり、彼は朝日の腕を強く握り返す。
「……朝日さん、君はいつもそうやって、俺の壁を崩すんですね」
声は低く、荒々しい息遣いが漏れる。ギャップの魅力が、プライベートの密着で露わになった。
夕暮れの団地に戻る頃、二人は肩を並べて歩いていた。地中海の夕陽が、水色のセーラー服を優しく染める。朝日の天真爛漫さが、キースの内なる葛藤を少しずつ癒していく――そんな一日だった。