白銀荘の銀警察署の訓練所には、午後の陽射しが差し込んでいた。コンクリートの床に響く足音と、重いサンドバッグが揺れる音が訓練所内に木霊する。

「フッ、オレの美しい肉体を鍛える時が来たようだな」

カラ松は革ジャンを脱ぎ、胸元を開いた黒シャツ姿で訓練所に現れた。チェーンネックレスがキラリと光る。サングラスをかけた彼の口元には、いつものナルシスト的な微笑みが浮かんでいる。

「新人かい？」

振り返ると、そこには屈強な白人男性が立っていた。白い髪、白色の瞳。腰には白銀の拳銃を構えている。制服に輝く銀のバッジが、彼がこの訓練所の教官であることを物語っていた。

「オレの名前はカラ松。この世の全ての美を体現する男さ」
カラ松は髪をかき上げながら言った。
「君が教官のサキマか？ フッ、よろしく頼むぜ、ベイビー」

サキマの眉がピクリと動いた。

「ここは遊び場じゃない。本気で警官を目指すつもりがあるのかな？」

「当然だ。オレのような美しい男が正義の味方になれば、この街の犯罪率は一気に下がるだろうな。犯人も、オレの美しさに見とれて自首するかもしれない」

サキマは深いため息をついた。

「まず基本から始める。腕立て伏せ50回」

「フッ、余裕だな」

カラ松は床に手をつき、腕立て伏せを始めた。しかし、5回目で既に息が上がり始める。

「1、2、3…うっ」

10回目で腕がプルプルと震え出した。

「どうした？まだ40回残ってるぞ」
サキマの声は厳しい。

「フッ、これは…戦略的休憩というやつさ」
カラ松は汗をかきながら言い訳した。
「美しい肉体は、無理をしてはいけないんだ」

「甘えたら終わり！」

サキマの大きな手がカラ松の背中を押した。

「警官になるということは、市民を守るということだ。自分の限界を超えてでも、人を助けなければならない時がある」

カラ松の胸に、サキマの言葉が響いた。確かに、自分はカッコつけているだけで、本当の強さを持っていない。

「もう一度だ。今度は心を込めてやること」

カラ松は再び腕立て伏せの体勢に入った。今度は、サキマの言葉を思い出しながら、一回一回に集中した。汗が床に滴り落ちる。

「11、12、13……」

なんとか20回までたどり着いた時、カラ松の腕は限界を迎えていた。

「もう…無理だ」

「諦めるな！ 君の中には、まだ眠っている力があるはずだ」

サキマの熱い声援が、カラ松の心に火をつけた。歯を食いしばり、残りの30回に挑む。途中で何度も倒れそうになったが、サキマの「頑張れ！」という声が彼を支えた。

「48、49…50！」

ついに50回を達成したカラ松は、床に倒れ込んだ。全身汗まみれ、息は荒い。しかし、その顔には今までにない達成感が浮かんでいた。

「よくやった！」
サキマが手を差し伸べる。
「君にも、やればできる力がある」

カラ松はその手を握り、立ち上がった。

「サキマ教官…オレ、本当の強さって何なのか、少しわかった気がする」

「それは良いことだ。しかし、これはまだ始まりに過ぎない。明日も来るかな？」

「当然だ。オレは…いや、俺は絶対に諦めない」

夕陽が訓練所を染める中、カラ松の新たな挑戦が始まった。