章2 ティファレトの堕落(ティファレトの視点)
酒の臭いが体に染みつく。夜の酒場で、黄のシャツが汗でべったり。褐色の肌、黒髪、灰色の瞳――美の象徴だった俺が、こんな有様。自信を失い、過去の栄光に縋る弱点。虚無が来る前から、心の空洞はあった。
ドアが開き、ビナーが入る。医療施設のカウンセラー、褐色の肌に黒髪、灰色の瞳。落ち着いた表情で近づく。
「ティファレト、話そうか。お前の心をな(自堕落もいいとこよ……)」
包容力のある声だが、共感しすぎる彼の弱点が、疲弊を招く。

「癒やす? 俺の堕落を? 笑わせるな。虚無がみんなを溶かすさ。俺みたいに」
俺はグラスを叩きつける。ビナーの目が曇る。
「お前はまだ輝ける。美は失われていないからな」
無気力に笑う。外では、虚無の霧が街を這う。チームの温度差が、俺の絶望を増幅する。