章1 ケテルの秩序（ケテルの視点）

月の王冠のヘアピンが、夜風に冷たく揺れる。俺の白い肌、白い髪、白い瞳は、変異白者の証。黒の制服を纏い、黒警官として街を巡る。秩序と統治の象徴、それが俺、ケテル。チームの指揮官として、柔軟性を欠く私の弱点は、時に味方を苛立たせる。

「ホド、報告を」
俺は厳格に命じる。ホドは褐色の肌に黒髪、灰色の瞳、オレンジのブレスレットを光らせて答える。
「黒は一生の栄光なり。だが、ティファレトの状況は深刻だ。酒場でまた倒れていた。虚無の影響か？」
虚無。国に浸食する霧のような存在。人々の感情を奪い、黒者さえ蝕む。ティファレトの堕落は、チームの亀裂を象徴する。黄のシャツに短パン、「美」の文字が嘲るように揺れる彼。かつて民衆を魅了した存在が、今やアルコールに溺れる廃人。
「放置できない。召集せよ」
俺の声は冷たい。人間的な情に鈍感な私だが、国を守るためなら、どんな裁きも下す。