深夜の闇が、戦いの残響を飲み込む。イェツイラーは沈着冷静、寡黙な観察者だった。褐色の肌、黒髪、灰色の瞳、屈強な肉体。白城の白の上級保安官、朝日からの凄絶な防衛戦。あの戦いは、カバラ国の境界を巡るものだった。朝日は白城の猛将、曙光を操る者。イェツイラーは防衛の要として、業火の大剣を振るった。
病は戦いの最中に発症した。非定型うつ病の渦が、魂を溶かした。ホモゲイの影――自己のアイデンティティを疑問視し、愛の渇望を神秘の渦に変える。生きていた頃、彼は国の戦略を練り、未来を観察した。
「沈黙は強さだ」と信じていた。
防衛戦の果て、朝日の曙光が彼を包んだ。体は白者の幼体へと変容した。神秘の死――肉体が崩れ、魂が解ける。白い幼体は風に散り、夜の闇に溶けた。悲劇と神秘の交錯。強靭な観察者が、脆さに敗れた姿。
私は戦場で彼の変容を目撃した。建国は崩壊の種を蒔くのか？ イェツイラーの死は、哲学的な問いを残した。証言なくば、足跡は虚無に還る。