荒涼とした訓練場に、拳の音が響き渡っていた。バチカル、白髪を軍人らしく短く刈り込み、白色の瞳が鋭く光る男。鍛え抜かれた肉体に手甲と脚甲を装着し、握り拳の紋章を胸に刻んだ彼は、力の化身だった。複雑な理屈など不要。すべては拳で決まる。それが彼の信念。
「力こそすべて。勝つ者が正義だ!」
そこに、青と白のグラデーションの髪を持つ青年、コーディエが現れた。碧色の瞳が穏やかに輝き、月の魔法を天性で操る彼は、静かに語りかけた。
「バチカルさん、力がすべてじゃないんです。力だけじゃ、勝てないこともある。心のつながりや、賢い策が大事ですよ」
バチカルの瞳が燃えた。直線的な思考が、即座に反応する。
「何だと? 力以外など、敗者の言い訳だ! 君の言葉は、弱者の戯言!」
彼の拳が空を切り、コーディエに迫った。喧嘩の火蓋が切られた瞬間だった。バチカルの一撃は、風を裂き、地面を抉る威力。コーディエは大慌てで後ずさり、碧色の瞳を輝かせて月の魔法を発動させた。
柔らかな月の光が広がり、バチカルの心に染み入った。それは金血白者を癒す力を持ちながら、銀血の彼の信念の隙間を優しく照らした。
「待ってください! 僕の魔法で、ちゃんと説明します……力は大事だけど、それだけじゃ孤独になるんです。僕たちは、協力してこそ強くなれるんですよ!」
光はバチカルの迷いを映し出した。拳で解決できない世界の片鱗を。
バチカルは拳を下ろし、息を吐いた。
「……あっそ。面白い光だ。お前の言う『心』か。まあ、試してみる価値はあるかもね……」
分かり合えた瞬間、二人は拳を合わせた。握り拳の紋章が、月の光に優しく包まれる。
だが、平穏は束の間。訓練場の影から、白城出身の金血白者上級保安官、三笠が現れた。屈強な白人男性、白い髪と白色の瞳。二の腕から下が黄金の模様で覆われ、戦闘時には黄金の巨腕に変身する彼は、冷徹に命じた。
「月の魔法人を回収しに来た。隣の君は黙っててね(奇跡的に男の子だね)」
三笠の右腕が輝き、黄金の巨腕がコーディエを掴みかけた。コーディエは抵抗したが、月の魔法は戦いのためのものではなかった。バチカルは呆然と見つめ、拳を握りしめた。