キムラヌートは金庫の隅で座り込み、カマルの言葉を反芻していた。月の魔法の影響は残っていた。あの光が、心の奥底を照らした。富を失う恐怖が、少しずつ薄れていく。
「金よりも大切なもの……。本当に、そんなものがあるのかな？」
カマルが富士に連れ去られようとした瞬間を思い出す。富士は白城のエリート、金血の白者。鍵型武器を自在に操り、敵を拘束する力を持つ。白城は富と権力の象徴で、キムラヌートもその一部だったが、今は違う。カマルの魔法が、彼の打算的な心を変え始めていた。
「くそが……。君のおかげで、こんな気持ちになるとは……初以上だ……っ！」
キムラヌートは立ち上がり、銀の装飾品を調整した。誇示欲の強い彼だったが、今は違う目的があった。カマルを助けること。それが、金よりも大切なもの——友情の始まりかもしれない。
富士はカマルを持ち上げて、白城へ向かっていた。道中、カマルは月の魔法を試みたが、富士の鍵型武器が魔法を封じるように絡みついていた。
「ダーメ。君の天性の力は、僕ら金血白者を癒すだけの特別な存在、僕らはそれを大切にしたい。白城で、もう一度、その力を見せて欲しいな？」
キムラヌートは追跡した。銀血の白者としてのネットワークを使い、富士を追いかけた。計算高い彼は、富の流れを逆算してルートを予測した。森の入り口で、彼を待ち伏せた。
「不潔不浄がぁ！！！ カマルくんを返せ！！！」
キムラヌートが叫ぶ。富士は動きを止め、鍵型武器を変身させた。
「キムラヌートね。君は銀の都の守護者でしょ？ なんで、邪魔すんの？」
キムラヌートは銀の装飾品を武器に変え、富士に挑んだ。
「病原菌には、絶対に分からない。富だけがすべてじゃない。カマルくんのおかげで、僕はそれを知ったんだぁ！！！」
戦いは激しかった。富士の鍵が鎖となり、キムラヌートを拘束しようとしたが、キムラヌートの支配欲が爆発した。銀の力が鍵を砕き、カマルを解放した。カマルは月の魔法を発動し、富士の心を癒そうとした。金血白者への癒しの力が、富士の白色の瞳を優しく照らした。
富士は膝をついた。
「あ……この光は……あったかい……」
しかし、彼は立ち上がり、空へ飛び去った。
「今回は特別に許してあげるから、次は無いと思ってね？」
カマルとキムラヌートは森で再会した。キムラヌートは照れくさそうに言った。
「君の言う通りだった。金よりも大切なもの……それは、仲間だっていうことを……」
白城は遠くに見えていたが、二人はそこへ向かわなかった。新しい道を選んだ。月の光の下で、物語は終わりを迎えた。キムラヌートの心は癒され、富の呪縛から解き放たれた。