銀の都の中心にそびえ立つ巨大な金庫は、キムラヌートの居城だった。銀血の白者である彼は、白い髪を厳格に結い上げ、銀の装飾品で全身を覆っていた。それは単なる装身具ではなく、彼の財力と権威を誇示するためのものだった。キムラヌートは、屈強な白人男性の体躯を持ち、白色の瞳で周囲を冷徹に見据えていた。「富こそ力の単位」と彼は信じていた。愛や信頼など、無意味な幻影。すべては換算可能な資産に過ぎない。
その日、金庫の奥深くで、キムラヌートは一人の青年と対峙していた。カマル=アイオ。青と白のグラデーションが美しい髪、蒼色の瞳を持つ青年だ。彼は月の魔法を操る天性の力を持ち、特に金血白者を癒す特別な力があった。カマルは穏やかな声で語り始めた。
「キムラヌートさん、金は確かに力ですが、それよりも大切なものがあるんです。心のつながり、信頼、友情……それらはお金では買えないんですよ」
キムラヌートは嘲笑した。白色の瞳が鋭く光る。
「ふざけるなよ? 富がなければ、何も残らない。君のような理想主義者は、すぐに現実の秤で測られて無価値になる。僕の金庫を見な? これが力だ。君の言葉など、塵芥だ」
カマルの言葉は、キムラヌートの信念を正面から否定した。富を信仰する彼にとって、それは許せない冒涜だった。支配欲と猜疑心が爆発し、キムラヌートは銀の装飾品を武器に変え、カマルに襲いかかった。
「君の舌を切り取ってやる! 僕の世界に、余計なものを混ぜるんじゃないよ?」
喧嘩は一瞬の激しさだった。キムラヌートのパンチがカマルの肩をかすめ、血が滴る。しかし、カマルは動じなかった。彼の蒼色の瞳が優しく輝き、月の魔法を発動させた。天性の力。それは金血白者を癒す特別なものだったが、奇跡的に銀血のキムラヌートにも効果を発揮した。柔らかな月の光が部屋を包み込み、キムラヌートの心に染み入った。
光はキムラヌートの恐怖を照らした。富を失う不安、所有欲の裏側にある脆さ。キムラヌートは膝をつき、息を荒げた。
「何だい、これは……。君の力か? なんで、こんな……」
カマルは微笑み、手を差し伸べた。
「僕の魔法は、心を癒すんです。金血白者には特に強いけど、あなたの心にも届いたみたいですね。喧嘩は終わりましょう。僕たちは友達になれるはずです」
キムラヌートは混乱しながらも、月の光の温かさに抗えなかった。初めて、富以外の何かを感じた。和解が成立した瞬間だった。
しかし、喜びは長く続かなかった。金庫の扉が突然開き、白城出身の上級保安官、富士が入ってきた。彼も屈強な白人男性で、白い髪と白色の瞳を持ち、金血の白者だった。鍵型の武器を携え、カマルを睨んだ。
「月の魔法の使い手を力と人体を回収しに来た」
富士の鍵型武器が変身し、鎖のようにカマルを絡め取ろうとした。カマルは抵抗したが、月の魔法は戦闘向きではなかった。キムラヌートは呆然と見つめていた。和解の余韻が、突然の危機に塗り替えられた。