霧に覆われた大地に、銀警官の国は佇んでいた。この国は外界から完全に隔絶され、白い髪と白い瞳を持つ民だけが暮らす閉鎖的な王国だった。空は常に灰色に曇り、建物は銀色の金属で覆われ、冷たい輝きを放っていた。統治するのは十人の銀警官――彼らは生まれながらの巨躯と異能を持ち、国家の絶対的な支配者として君臨した。白髪を厳しく結い上げ、白瞳が無感情に光る彼らは、一見同一の存在のように見えたが、各々が抱える異常な欲望と性格が、国を蝕む毒となっていた。
銀警官たちは、古代の儀式か科学的な実験によって作られた存在だと噂されていた。彼らは互いに同族でありながら、思想が激しく対立し、暗闘を繰り返していた。国民は彼らを「正義の守護者」と崇めざるを得なかったが、心の底では恐怖を抱いていた。なぜなら、銀警官の行動はしばしば理不尽で、欲望のままに民を翻弄したからだ。
そんな中、国外から「異色の存在」が忍び寄っていた。白黒者――黒い髪と灰色の瞳を持つ黒者たち――や変異白者(偽白者)――金色の血を流す白者たち――は、銀の純粋さを乱す異端として銀警官たちの標的となった。彼らは国境の霧をくぐり抜け、飢えや病に苦しむ民を救おうと潜入した。物語は、そんな一人の白黒者、インディゴガブロが国境を越えた日から始まる。インディゴガブロは黒いマントをまとい、銀の輝きに染まらない影のように、国の中枢へ向かった。彼の目的は、銀警官たちの秘密を暴き、民を解放することだった。だが、それは十人の欲望が交錯する、血塗れた群像劇の幕開けに過ぎなかった。