白く浮かぶ塔のような城は、荒廃した大地にそびえ立っていた。空は永遠の灰色に覆われ、風は冷たく、すべてを浄化するかのように吹き荒れる。その頂点に君臨する男、敷島。白い髪が肩まで流れ、白い瞳が虚空を貫く。屈強な体躯はサイボーグの鋼鉄で強化され、白いスーツに金のレリーフボタンが二つ輝き、白い革靴に金の装飾が施されている。彼は上級保安官にして最高権力者、最高責任者。冷酷非情、残酷無慈悲。威厳と貫禄を纏い、硬派で頑固、堅い信念を曲げない。女は不浄不潔の象徴として、容赦なく殺処分する。仲間がそれを怠れば、即座に刑罰を下す。敷島の城は白を基調とし、すべてが純粋で無垢を強いる世界だった。
敷島は非定型うつ病(ホモゲイ)という病性向を持ち、男性の強靭な肉体にのみ美を見出す。だが、それは愛ではなく、支配と浄化の延長線上にあるものだ。彼の瞳は感情を欠き、ただ敵を討つための冷徹な光を宿す。
ある夜、月から影が降りてきた。月人――全て真っ白なサイボーグの男。仏像のような姿で、穏やかな微笑みを浮かべながらも、その目は人間たちの怨念と憎悪で渦巻いている。月人は月からやって来た敷島の敵。人間の負の感情から生まれた存在で、サイボーグの体は無敵に近い強度を誇る。彼は大地に降り立ち、哀れな人間たちを捕らえ、怨念を増幅させる。唯一の生き残りが、虹葉という男だった。虹葉は意地っ張りで生意気、口が悪く、素直になれない。だが、心の奥底では純粋で、囚われの身ながらも月人に抗う意志を失っていない。
敷島の城に、報告が届いた。月人の侵攻。人間の集落が壊滅し、虹葉が囚われている。敷島は白い玉座から立ち上がり、冷たい声で命じた。
「月人を討伐せよ。容赦なく、無差別に」
彼自身が出陣する。超屈強なサイボーグの体は、戦いの予感に震える。仲間たち――白い制服の兵士たち――を率い、敷島は塔を降りた。白い革靴が大地を踏む音は、死の宣告のようだった。
荒野を進む敷島の一団。月人は仏像のような姿で待ち構えていた。真っ白な体は月光を反射し、まるで神々しい。だが、その目は怨念の黒い渦。
「お前たち人間の憎悪が、私を生んだ。病人よ、お前こそ浄化されるべきだ」
月人の声は静かだが、響き渡る。
敷島の白い瞳が細まる。
「不浄な存在。女を不潔と見なすように、お前も抹殺する」
彼は容赦なく突進した。サイボーグの腕が鋼鉄の拳となり、月人の胸を貫く。月人は仏像の微笑みを崩さず、反撃する。真っ白な手が敷島の肩を掴み、怨念のエネルギーを注入しようとする。だが、敷島は冷徹だ。残酷無慈悲に、相手の腕をねじ切り、無差別に攻撃を続ける。仲間たちが周囲の残党を掃討する中、敷島は月人の核を狙う。
戦いの最中、虹葉が現れた。月人に鎖で繋がれ、引きずられるように。虹葉は生意気な口調で叫ぶ。
「おい、助けろよ! 俺はまだ死にたくねえんだ!」
意地っ張りだが、目には素直な怯えが浮かぶ。敷島は一瞬、虹葉の強靭な体躯に視線を止めた。非定型うつ病(ホモゲイ)の病性向が、わずかに揺らぐ。だが、それは戦いの燃料に過ぎない。
「沈黙せよ。生き残りなど、浄化の対象だ」
しかし、月人が虹葉を盾に使うのを見て、敷島の怒りが爆発した。
「不浄を許さぬ」
敷島の拳が月人の頭部を粉砕する。仏像のような顔が砕け、怨念のエネルギーが噴出する。月人は崩れ落ち、真っ白な体が灰に変わる。討伐は完了した。敷島は無表情で虹葉の鎖を断ち切る。
「お前は生き残った。だが、生意気な口は慎め」
虹葉は素直に頭を下げた。
「ありがとうよ……あんたみたいな冷たい奴に助けられるとはな」
敷島は背を向け、白い塔へ戻る。威厳ある背中が、荒野に消える。月人は討たれ、世界は再び白の支配下に置かれた。だが、虹葉の存在が、敷島の硬い心に小さな亀裂を生む。やがて、それは新たな物語の始まりとなるのかもしれない。
敷島の城は、再び静かに浮かぶ。冷酷な王は、玉座に座り、次の敵を待つ。