満天の星の下、消えゆく君と恋をする


 初めて出会った時のこと。
 夏祭りの夜。
 神社の裏手の雑木林の下。
 中学一年生の蒼汰と小学夜二年生の美織が、夜空に輝く星を眺めていた。
 彼が寂しそうにポツリと呟く。
『母さん、俺が泳ぐのを楽しそうに観てたけど……一緒に泳ぐって約束、叶えてはくれなかったな』
 幼い美織はぎゅっと唇を噛み締めると大きな声を上げた。
『だったら、みおがお兄ちゃんと一緒に泳いであげる!』
『はあ? お前が』
 蒼汰が面食らった顔をしていた。
 美織は声を張り上げる。
『うん、泳げないけど! ちょっとなら泳げるはず!』
『泳げないのに海を泳ぐのは危ないからよせよな』
 すると、彼女はシュンと項垂れた。
『いやいや気持ちは嬉しいんだよ。ああ、そうだな。じゃあ、俺がお前に泳ぎをいつか教えてやるよ』
『ええっ、本当に?』
『そうしよう、それなら問題なしだ』
『わあい、うれしい! 絶対に一緒に海で泳ぐからね!』
 すると、強面の蒼汰がまるで太陽のように微笑んだ。
『ありがとう、だったら俺もお前の星空観賞に付き合ってやるよ』
 まだ小さな美織の心臓がドキドキ高鳴りはじめる。
『約束だ』
『約束』
 蒼汰と美織が指切りを交わす。
『お前が元気になったら海を一緒に泳ごうぜ』
『うん!』
 美織は蒼汰にもらった流れ星の欠片を大切そうにぎゅっと抱きしめた。
 当時の二人は思いもしなかったけれど――
 この時交わした約束が、後に蒼汰の心残りになって、この世に引き留める役割を果たし……
 美織の強い願いが蒼汰の渡した「流れ星の欠片」に積もっていって……
 いつしか星に願いが届き、満天の星の下、二人に奇跡を起こしたのだった。