「サッカーだけの中学ってないかな?」
「野球だけの中学ってないかな?」
「陸上だけの中学ってないかな?」
6年生になった時、勉強が大嫌いな大柄の男子3人が集まって、夢みたいなことを話していた。
「お前はいいよな、勉強ができるから」
3人は羨ましそうにわたしを見た。
「俺たちバカだから」
自嘲気味に吐き捨てた。
「そんなことないよ。やればできるって」
4年生の時、彼らに助けてもらったわたしは、今度は自分が彼らを助けたいと本気で思っていた。あの時助けてもらわなかったら、今頃どうなっていたかわからないからだ。それほど恐ろしい経験をしたのだ。だからなんとしても彼らの役に立ちたかった。
でも、あの子たちにやる気を起こさせるにはどうしたらいいんだろう?
どうしたら勉強に興味を持ってもらえるのだろう?
必死になって考えても何も思い浮かばなかった。強制させるわけにもいかないし、付きっ切りで教えるわけにもいかない。自分で進んで勉強したくならなければ意味がないのだ。
その後も考え続けたが、これ以上考えても無理だと思って、思い切ってお母さんに相談した。すると、「勉強と思うから嫌になるのよ」と笑いながら言った。
「えっ?」
意味がわからなかった。
「貴真心は勉強のために本を読んでいるの?」
「ううん」
「本が好きだから読んでいるんでしょ」
「そう」
「だったら同じよ」
えっ、同じ?
でも、そんなことを言われても、よくわからなかった。
お母さんは何を言いたいのだろう?
ベッドに入ってからも一生懸命考えたが、まったくわからなかった。それでも、なんとかしたかった。助けてもらったお返しをしたかった。もし、あの時助けてくれなかったら不登校になっていたかもしれないのだ。いや、もっと酷いことになっていたかもしれないのだ。そんなことを考えていると、突然、ゾッとする顔が浮かんできた。寒田と黄茂井の顔だった。一瞬にして心が凍った。



