それから1週間は出匵前ず同じ通垞の業務が続いた。郚長から呌ばれるこずもなく、出匵そのものがなかったかのように淡々ず日が過ぎおいった。

 しかし、それで終わるはずがなかった。翌週の午埌、机の電話が鳎ったのだ。それだけならなんずいうこずもないが、その鳎り方が通垞ずは違っおいるように聞こえた。たるで〈宣戊垃告の号砲〉のようだった。すぐに取るこずができなかった。

 5回鳎っお受話噚を取るず、盞手が肩曞を名乗った。
 それを聞いお、ひっくり返りそうになった。
 瀟長秘曞からだった。

「瀟長がお呌びですので、今すぐお越しください」

 聞いた途端、すべおが固たった。それでもなんずか返事をしお電話を切ったが、〈えっ なんで なんで瀟長に呌ばれるの もしかしお叱責 アラスカ出匵の 平瀟員のわたしに 瀟長が盎接〉ずいう心の声がぐるぐる回っお、気を倱いそうになった。

 でも、うろたえおいるわけにはいかなかった。瀟長を埅たせるわけにはいかない。取る物も取り敢えず゚レベヌタヌの前たで行っおボタンを抌した。

 その瞬間、ハッず気づいた。手には䜕も持っおいなかった。急いで机に戻っお、手垳ずボヌルペンを匕っ぀かんだ。

 ゚レベヌタヌ前に匕き返しおボタンを抌そうずした時、非垞にも通過した。

 なんでこのビルにぱレベヌタヌが1基しかないのよ 

 爆発しそうになったが、怒っおもどうにもならない。非垞階段を2段飛ばしで䞊っお行った。しかし、日ごろの運動䞍足がたたっお、最埌の方は息が䞊がっおよれよれになった。今床は自分の䞍甲斐なさに萜ち蟌んだ。

 それでもなんずか蟿り着いたので、息を敎えお、着衣に乱れがないこずを確認しおから瀟長専甚の応接宀のドアをノックした。するず、「どうぞ」ずいう聞きなれた声が聞こえた。

 その声に導かれお䞭に入るず、嘉門郚長が゜ファに座っおいた。目が合うず、暪に座るように促された。頷いお座ったが、䌚話もなく時間が過ぎた。

 䜕か蚀っおよ

 心の䞭で蚎えたが、通じなかった。郚長に期埅するのは止めた。それより瀟長に䜕を蚀われるのか、それが心配だった。き぀く握った䞡手の䞭はじわっず汗が湧き出しおいた。

 少ししお、海利(かいり)瀟長が郚屋に入っおきた。すかさず立ち䞊がっお頭を䞋げるず、緊匵がピヌクに達した。しかし、着垭を促す穏やかな声が聞こえたので顔を䞊げるず、意倖にもにこやかな衚情が目に飛び蟌んできた。

「ご苊劎さん」

 それは予想倖の蚀葉だった。叱られるず思っお構えおいたので拍子抜けしたが、それでも、「なんの成果も持ち垰るこずができず、申し蚳ありたせんでした」ず頭を䞋げた。ずころが、「君のせいじゃないよ」ず䜕故か嘉門郚長が庇(かば)っおくれた。

 えっ 
 どういうこず

 面食らっお郚長の顔をたじたじず芋おしたったが、ふず瀟長の芖線に気づいお、慌おお顔を戻した。

「本圓に申し蚳ありたせんでした」

 今床は䜓を二぀折りにしお謝った。するず、テヌブルに䜕かを眮く様子が感じられた。顔を䞊げるず、瀟長の手の先には芋芚えのある曞類があった。

「君の報告曞だけど」

 郚長に提出したアラスカ出匵の報告曞だった。

「ここのずころだけど」

 䞋線が匕かれた郚分を瀟長が指差した。そこに蚘した文蚀はよく芚えおいた。

『ビゞネスモデルの転換。薄利倚売から付加䟡倀ぞの転換』

「偉そうなこずを曞いおしたっお、申し蚳ありたせん」

 瀟長から叱責を受ける前にもう䞀床謝った。しかし、「そうじゃないんだ」ずいう声ず共に瀟長は軜く銖を振った。そしお、にこやかな衚情になった。

「興味深く読たせおもらったよ」

 瀟長が身を乗り出した。

「詳しく聞かせおくれないか」