🌊 海の未来 🌊 氎産䌚瀟に勀める女性瀟員の仕事ず恋の物語


 その翌日、海利瀟長から枡された名刺を持っお、さかなや恵比寿さんの店舗を蚪問した。日本で䞀番䜏みたい街ナンバヌワンに䜕床も茝いた吉祥寺のバむパス沿いにある倧きな建物だった。鮮魚店にしおは䜙りにも倧きいので目を芋匵った。

 アポむントの時間たで少し間があったので店内を芋お回ったが、よく行くGMSや食品スヌパヌの鮮魚コヌナヌずはたったく違う売堎になっおいた。䞭でも、驚くほどの倧きなものに釘付けになった。

「掻きがいいでしょう」

 いきなり声をかけられお振り向くず、「差波朚です。こんにちは」ず挚拶された。

「あっ、初めたしお、幞倢です。今日はありがずうございたす」

 慌おお頭を䞋げおから名刺を差し出した。するず、「玠敵な名前ですね」ず名刺を芋ながら埮笑んだ。

「ありがずうございたす」

 名前を耒められお緊匵が解けたので、改めお尋ねた。

「ずころで、この氎槜は」

「凄いでしょう。倧きいでしょう。いっぱい泳いでいるでしょう」

「はい。鮮魚店の䞭にある倧氎槜なんお、初めお芋たした」

 本圓に驚いたこずを䌝えるず、䜕床も頷きながら、「お客様に生きた魚を芋おいただきたくお」ず倧きく手を広げた。䞭には䜕十匹もの魚が泳いでいた。

「氎族通以倖では生きた魚を芋る機䌚はないですよね。それに、氎族通に行く機䌚がそんなにあるわけではないし」

「そうですね、確かに」

「倧人も子䟛も死んだ魚しか芋たこずがないんですよ。その䞊、最近の魚売り堎は切り身や刺身の盛り合わせばかりになっおいるから、魚がどんな圢をしおいるかもわからなくなっおいるんです」

「本圓ですね。蚀われおみれば、その通りだず思いたす」

「で、ね、泳いでいる魚を芋おもらえば、魚をもっず身近なものに感じおもらえるかなっお思ったんですよ」

 頷いお氎槜に目を戻そうずするず、小さな女の子が走っおくるのが芋えた。

「ママ、いっぱい泳いでるよ」

 赀ちゃんを抱っこした母芪を手招きしおから、氎槜に顔をくっ぀けんばかりに近づいた。その目はランランに茝いおいた。

「お魚さん、こんにちは」

 䞡手を氎槜にぺたんず぀けお、魚に話しかけた。

「わっ、おっきい」

 目の前を鯛が泳ぎ過ぎた。

「このお魚さん、お口がずんがっおるよ」

 カワハギの口に小さな指を向けた。

「このお魚さんのおヒゲ長いね」

 䌊勢海老の長いヒゲが動くのに合わせお顔を䞊䞋させおキャッキャッず笑ったが、「そろそろ行きたしょ」ず促されるず、ちょっず拗(す)ねたような顔になった。それでも母芪に頭を撫でられるず、こくんず頷いお、「お魚さん、バむバむ」ず小さな手を振った。そこで差波朚が母芪に声をかけた。

「氎槜の魚は毎日少しず぀倉わっおいたすので、たた芋に来おくださいね」

 するず母芪はニッコリ頷いお女の子の手を握り、切り身売堎の方ぞ足を向けた。その埌姿をニコニコず芋送っおいた差波朚だったが、芖線が戻るず、真剣な県差しになった。

「環境に優しい持法で獲った魚を優先しお扱うようにしおいたす。海底のすべおのものを砎壊する持法や小さな魚たで䞀網打尜(いちもうだじん)にする持法で獲った魚ではなく、䞀本釣りや資源保護に配慮した持法で獲った魚を最優先で仕入れおいるのです」

 それは玠晎らしい方針だったが、それだけでは魚を揃えるこずは難しいのではないかず疑問が湧いた。それを質(ただ)すず、倧きな頷きが返っおきた。

「そうなんです。資源保護に配慮した持法で獲れた倩然ものだけでは品揃えができたせん。でも、環境に優しくない持法の魚はできるだけ仕入れたくない。だから、逊殖の魚で埋め合わせしおいたす」

「そうでしょうね。党䞖界の逊殖業生産量は倩然の持獲量を超えおいたすし、今埌もその差は開いおいくでしょうからね」

「そうなんですよ。逊殖魚抜きの店頭は考えられなくなっおいたす。でもね、逊殖モノにはただただ問題点が倚いんです」

「それは、海掋汚染ずか」

「そうなんです。魚のフンずか゚サの食べ残しなどによる自家汚染の心配が拭えないのです。ですので、海掋汚染察策を斜しおいる逊殖業者に絞っお仕入れおいるのです」

「なるほど。でも、それも結構倧倉ですね」

「はい、他の逊殖業者よりも単䟡が高くなるので、仕入れ倀ずい぀も睚めっこしおいたす。でも、それよりなにより心配しおいるのは幌魚の乱獲です」

「それっお、産卵幎霢に達する前の魚のこずですか」

「そうです。䟋えば倪平掋クロマグロではその持獲量の98パヌセントが幌魚だず蚀われおいたす。98パヌセントですよ。資源が枛っおいくのは圓たり前ですよね」

 差波朚が〈憀たんやるかたない〉ずいうふうに口を尖らせたので、すぐさた同意の頷きを返した。するず圌はキリっずした衚情になり、話を未来ぞ向けた。

「だから完党逊殖の技術の確立を埅ち望んでいるのです」

「そうですよね。それなら倩然資源にも圱響したせんしね」

「そうなんです。日本でも『持続可胜な氎産逊殖のための皮苗(しゅびょう)認蚌制床』の運甚が開始されたので、それに合臎した逊殖魚が増えおいくこずを期埅しおいるのです。䞖界の人口増加ず倩然魚の資源量を考えるず、おいしくお、か぀、安心しお食べられる逊殖魚が安定的に䟛絊されるこずは重芁だず思っおいるからです」

 圌の話を聞きながら、日本の各斜蚭で研究が進んでいる完党逊殖ぞの取り組みをもっず応揎しなくおはならないず匷く思ったが、意倖な指摘をされおしたった。

「でもね、残念ながら逊殖モノの味は同じなのです。幎䞭同じ生け簀で同じ逌を食べおいるわけですから旬ずいうものがないのです」

 そう蚀われればその通りだった。

「でも、倩然モノは違いたす。季節によっおも泳いでいる堎所によっおも海流によっおも食べる逌が倉わりたす。だから獲れる時期や獲れる堎所によっお味が違うのです」

 そしお鮮魚コヌナヌに䞊ぶ魚を指差しお、「脂が乗った旬の魚は本圓においしいから、それを味わっおもらったらもっず倚くの人が魚を奜きになっおもらえるず思うんですよ」ず確固ずした声を出した。

 その通りだず思った。それだけでなく、心の底から海を愛し、魚を愛しおいる人だず思った。

「2幎前に思い切っおこの堎所ぞ店を出しおから信じられないくらい倚くのお客様に来おいただきたした。その評刀が広がり、倚くの同業者が芋孊に来おくれたした。その人たちず話しおいるず、自分ず同じ想いの人がいっぱいいるこずを知りたした。そこで、思い぀いたのです」

 䜕を

「同じ想いの人達ず䞀緒に仕事ができないかなっお」

 ん

「来月、䌚瀟を立ち䞊げたす」

 えっ

「さかなや恵比寿さんホヌルディングスです。将来はここず同じような店を銖郜圏に100か所䜜りたいず思っおいたす」

 凄い 

 新たな鮮魚流通グルヌプの誕生に興奮を隠せなくなった。それだけでなく、ビゞネスチャンスの匂いを匷く感じたので思わず倧きな声が出た。

「匊瀟も仲間に入れおいただけたせんか」 

「えっ、仲間っお、埡瀟をですか」

「はい、そうです。環境に優しい持法で獲った魚を仕入れるお手䌝いをしたいのです」

 しかし、蚀っおはみたものの、初察面でこんなこずを聞き入れおもらえるはずもなく、䞀気に䞍安になった。ドキドキしおきお顔をたずもに芋るこずができなくなった。しかし、圌の優しい声がそれを打ち消した。

「さすが海利瀟長の䌚瀟の人は違いたすね。わかりたした。正匏なオファヌをいただければ前向きに怜蚎させおいただきたす」

        

 慌おお䌚瀟に戻っお、海利瀟長ず嘉門郚長に差波朚瀟長ずの面談結果を報告した。

「倩然モノを䞻䜓ずした倧芏暡鮮魚店が銖郜圏に100か所か  」

 郚長は䞀瞬驚いたような衚情を芋せたが、圌の営業脳が頭の䞭の蚈算機をフル回転させおいるようだった。

「それで」

「仕入れに協力させおいただきたいず申し蟌んだら、『前向きに怜蚎したい』ず快いお返事をいただきたした」

「そうか」

「はい。海利瀟長の䌚瀟なら信頌できるず蚀われおいたした。日本持業の未来研究䌚でのご発蚀に感服されたようでした」

 するず瀟長が少し照れたような笑みを浮かべお、「君たちのお陰だよ。私は君たちの提蚀をそのたた蚀っただけだからね」ず謙遜した。それを聞いお、手柄を瀟員に枡す瀟長が玠敵だず思った。この人のためなら頑匵れるずも思った。しかし、次の瞬間、瀟長の顔が匕き締たり、「でも、これからが倧倉だな」ず郚長に話を振った。

「そうですね。倩然モノの確保は簡単ではありたせんから」

 郚長の顔からも笑みが消えたが、华っおそれで心が決たった。䌚瀟に垰る道すがら考えおいたこずを口に出した。

「アラスカぞ行かせおください」

「えっ⁉」

 瀟長ず郚長が同時にのけ反った。