ひずしきり食べおお腹いっぱいになっお幞せな気分になるず、久しぶりに音楜が聎きたくなった。CDを収玍しおいる本棚を芗き、今の気持ちに合う音楜を探した。なんか解攟されおいる感じだし、穏やかな感じなので、ロックじゃなく、ゞャズでもなく、枩かい音がいいな、ず思いながら、䞀枚䞀枚抜き出しおは元に戻す動䜜を繰り返した。
 そうこうしおいるうちに、゚レキの音ではなくお生の音がいいような気がしおきた。するず、アコヌスティック・ギタヌの音色が頭の䞭に流れおきた。その瞬間、探しおいた指が止たった。

 圌のギタヌず歌しかない。

 取り出したCDの衚玙を芋お頷いた。しかし、すぐに聎くこずはしない。音楜を聎く前にするこずがあるからだ。今日の気分ず音楜に合うお酒の準備だ。食噚棚にしたっおいたりむスキヌずグラスを取り出し、氷ず炭酞を冷蔵庫から出しお、ハむボヌルを䜜った。そしお、ゞェむムス・テむラヌのCDをプレヌダヌにセットし、再生ボタンを抌した。

 倧奜きな曲が流れおきた。

『You’`ve Got a Friend』

 邊題は『きみの友達』。1971幎に党米第1䜍を蚘録した倧ヒット曲で、䜜者はキャロル・キング。ギタヌのアルペゞオで始たるシンプルなむントロに導かれお圌の優しい歌声が心の䞭にスッず入っおきた。〈君は䞀人じゃない、私がいるよ、い぀でも飛んでいくよ〉ず、困難な状況に陥っお助けが必芁な友人に囁きかけるような歌声がしみ蟌んできた。するず、なんか枩かいもので心が満たされたようになり、ずっおもいい感じになっおきた。

 挔奏が終わるず、オリゞナルが聎きたくなった。この曲は元々キャロル・キングが自身のアルバムに収めるためにレコヌディングをしおいたものなのだが、それを友人である圌にプレれントしお先に発売させたずいう逞話が残っおおり、その優しさに觊れたくなったのだ。レコヌド棚を探すず、すぐに芋぀かった。

『぀づれ織り』

 原題は『Tapestry』。ゞヌンズ姿で窓際に座る圌女の゜バヌゞュが光っお、優しい県差しがこちらを芋おいる玠敵なアルバム・ゞャケット。それを広げるず、ヘッドフォンをした真剣な衚情の写真がコラヌゞュされおいるものが目に入った。録音時の写真だろうか、それをしばらく芋぀めおから、ビニヌル補の内袋に収玍されたレコヌドを慎重に取り出した。
 この瞬間がたたらない。取り出す時に挂っおくる独特の銙りにりットリしおしたうのだ。これから始たる玠敵な䜓隓にワクワクしながらレコヌド盀をタヌンテヌブルに乗せた。

 ミュヌト(消音)状態にしお針をレコヌド盀に萜ずし、溝をなぞるのを確認しおミュヌトを解陀するず、面1曲目の『きみの友達』が始たった。ゞェむムス・テむラヌず違っおピアノの匟き語りで、圌女のハスキヌな歌声が耳に届くず、䞀瞬にしお心を奪われた。

 その曲が終わるず急に人のラむノが芋たくなった。本棚を探すず、これもすぐに芋぀かった。

『LIVE AT THE TROUBADOUR(トルバドヌル)』

 キャロル・キングずゞェむムス・テむラヌが2010幎に共挔したラむノ。

 針をレコヌドから䞊げお、アルバム・ゞャケットに収玍しお棚に戻しおから、DVDをセットしお再生ボタンを抌した。
 むントロダクションに続いお人の姿が映し出されるず、目が釘付けになった。ゞェむムス・テむラヌがストヌルに腰かけおアコヌスティック・ギタヌを匟き始めるず、キャロル・キングがピアノで䌎奏する、そんなずおも自然な感じで始たったステヌゞに吞い蟌たれおいき、やがお心地良い枩もりの䞭にいるように感じおきた。

 亀互に自䜜曲を歌ったあず、昔圌らず䞀緒に挔奏したバンド仲間が登堎した。そしお、次々に飛び切りの名曲が挔奏された。人のハヌモニヌが始たるず、䌚堎からため息が出た。62歳になっおも若い頃ず同じように䌞びやかな声で歌うゞェむムス・テむラヌず、68歳になっおも昔ず倉わらないハスキヌな声で情緒たっぷりに歌うキャロル・キング、なんお玠敵なミュヌゞシャンなのだろう。2人の声にしばし酔いしれた。圌らを芋ながら、音楜を聎きながら、幞せな時間が過ぎおいった。