会場中の視線が久松へ集まっていた。
ほんの数分前まで勝ち誇っていた男は、今や顔面蒼白で床へ座り込んでいる。
水戸はそんな久松を見下ろしながら、静かに言った。
「何で?」
その声には嘲笑すら無い。
「お前の望み通りにしてやったんじゃないか」
久松の喉がひくりと震える。
そして恐る恐る水戸を指差した。
「ま……まさか……」
声が掠れる。
「お前……本当に……?」
「だから、さっきから言ってるだろ」
水戸は淡々と返した。
その瞬間。
今川が慌てて前へ出る。
「い、いや!俺は信じないぞ!!」
額へ汗が浮いていた。
「牧野部長も、水戸に弱みを握られてるか何かで話を合わせてるんだ!こんな事ある筈がない!!」
完全に取り乱している。
愛子も必死に頷いた。
「そうだわ! こんな事までして、本物のご老公様に知られたら、ただじゃ済まないわよ!!」
すると久松の隣にいた蜂屋も叫ぶ。
「こんな不当人事、許される訳ないだろ!!」
そして今川へ縋るように言った。
「今川部長! 早く三ツ葉ホールディングスの知り合いに連絡して、水戸をクビにして下さい!!」
「分かった!」
今川は勢いよくスマートフォンを取り出す。
そしてどこかへ電話を掛けた。
「もしもし、青山か?」
今川は周囲へ聞かせるように大きな声で話す。
「実は今、三ツ葉エレクトロニクスのパーティー会場で、ご老公様の名を騙る不届き者が騒ぎを起こしていてな」
会場が静まり返る。
「本多専務へ話して、直ぐクビにしてもらえないか?」
数秒後。
「……よし、頼むぞ!」
通話終了。
今川は勝ち誇ったように笑った。
「丁度、今、本多専務がこちらへ向かっているそうだ」
そして水戸を睨む。
「青山から話を通して、お前をクビにするよう頼んでくれるそうだ!」
愛子も強気を取り戻す。
「そうよ! 覚悟しておきなさい!」
だが水戸は全く動じなかった。
むしろ呆れたように小さく息を吐く。
「お前ら、まだ分かってないのか?」
静かな声。
「本多がここへ向かってるって言ったよな」
そして冷たく笑う。
「それは、俺がさっき呼んだからだ」
今川が即座に否定する。
「そんなの偶然に決まってる!!」
「そうよ!偶然よ!!」
愛子も必死だった。
水戸はそんな二人を見ながら言う。
「本多専務を何度も呼び捨てにして……」
今川がニヤリと笑う。
「ご老公様はもちろん、本多専務もお前を許さないだろう」
愛子も続ける。
「クビだけじゃ済まないかもね」
そして蔑むように言った。
「まぁ、どんな処罰を受けようと自業自得だわ。あんたみたいな能無しのクズが、ご老公様の名を騙って騒ぎを起こしたんだから」
だが水戸は静かだった。
一切感情を乱さない。
「本多が来れば全て分かる」
その言葉には絶対的な確信があった。
「覚悟しておくのは、お前らの方だ」
その時だった。
ホテル入口から声が響く。
「三ツ葉ホールディングス専務取締役、本多様がいらっしゃいました!!」
会場の空気が一変する。
全員が入口へ視線を向けた。
そして現れた。
高級スーツを完璧に着こなした、一人の男。
三ツ葉ホールディングス専務取締役、本多忠信。
“三ツ葉グループナンバー2”。
ご老公の右腕。
その圧倒的存在感に、会場中の人間が息を呑む。
本多は迷いなく会場中央へ歩いてくる。
すると今川が真っ先に飛び出した。
「お初にお目にかかります!!」
今川は腰を九十度近く曲げる。
「三ツ葉エレクトロニクスPC事業部部長、今川と申します!!」
本多は無表情だった。
「実は今、ご老公様の名を騙るクズが騒ぎを起こしておりまして!」
今川は水戸を指差す。
「即刻クビにして、追い出して頂ければと……!」
本多はゆっくり今川を見る。
「お前が今川か」
低い声だった。
「青山から話は聞いている」
今川が勝ち誇った笑みを浮かべる。
だが本多は続けた。
「で、その“ご老公様の名を騙るクズ”とは誰だ?」
今川は即座に水戸を指差した。
「あいつです!!」
本多は水戸を見る。
そして小さく呟いた。
「……なるほど。そういう事か」
愛子も慌てて前へ出る。
「三ツ葉エレクトロニクス、コンシューマ事業部次長の水野です!」
必死にアピールする。
「あの男は、今川部長の功績を全部自分の物だと言い張った上に、本多専務の事まで呼び捨てにしていました!」
そして深々と頭を下げた。
「厳正な処罰をお願い致します!!」
本多は静かに頷く。
「分かった」
そして、そのまま水戸の方へ歩いていく。
会場が静まり返る。
今川と愛子は勝利を確信したように笑っていた。
だが次の瞬間。
本多は水戸の前で立ち止まると――。
ほんの数分前まで勝ち誇っていた男は、今や顔面蒼白で床へ座り込んでいる。
水戸はそんな久松を見下ろしながら、静かに言った。
「何で?」
その声には嘲笑すら無い。
「お前の望み通りにしてやったんじゃないか」
久松の喉がひくりと震える。
そして恐る恐る水戸を指差した。
「ま……まさか……」
声が掠れる。
「お前……本当に……?」
「だから、さっきから言ってるだろ」
水戸は淡々と返した。
その瞬間。
今川が慌てて前へ出る。
「い、いや!俺は信じないぞ!!」
額へ汗が浮いていた。
「牧野部長も、水戸に弱みを握られてるか何かで話を合わせてるんだ!こんな事ある筈がない!!」
完全に取り乱している。
愛子も必死に頷いた。
「そうだわ! こんな事までして、本物のご老公様に知られたら、ただじゃ済まないわよ!!」
すると久松の隣にいた蜂屋も叫ぶ。
「こんな不当人事、許される訳ないだろ!!」
そして今川へ縋るように言った。
「今川部長! 早く三ツ葉ホールディングスの知り合いに連絡して、水戸をクビにして下さい!!」
「分かった!」
今川は勢いよくスマートフォンを取り出す。
そしてどこかへ電話を掛けた。
「もしもし、青山か?」
今川は周囲へ聞かせるように大きな声で話す。
「実は今、三ツ葉エレクトロニクスのパーティー会場で、ご老公様の名を騙る不届き者が騒ぎを起こしていてな」
会場が静まり返る。
「本多専務へ話して、直ぐクビにしてもらえないか?」
数秒後。
「……よし、頼むぞ!」
通話終了。
今川は勝ち誇ったように笑った。
「丁度、今、本多専務がこちらへ向かっているそうだ」
そして水戸を睨む。
「青山から話を通して、お前をクビにするよう頼んでくれるそうだ!」
愛子も強気を取り戻す。
「そうよ! 覚悟しておきなさい!」
だが水戸は全く動じなかった。
むしろ呆れたように小さく息を吐く。
「お前ら、まだ分かってないのか?」
静かな声。
「本多がここへ向かってるって言ったよな」
そして冷たく笑う。
「それは、俺がさっき呼んだからだ」
今川が即座に否定する。
「そんなの偶然に決まってる!!」
「そうよ!偶然よ!!」
愛子も必死だった。
水戸はそんな二人を見ながら言う。
「本多専務を何度も呼び捨てにして……」
今川がニヤリと笑う。
「ご老公様はもちろん、本多専務もお前を許さないだろう」
愛子も続ける。
「クビだけじゃ済まないかもね」
そして蔑むように言った。
「まぁ、どんな処罰を受けようと自業自得だわ。あんたみたいな能無しのクズが、ご老公様の名を騙って騒ぎを起こしたんだから」
だが水戸は静かだった。
一切感情を乱さない。
「本多が来れば全て分かる」
その言葉には絶対的な確信があった。
「覚悟しておくのは、お前らの方だ」
その時だった。
ホテル入口から声が響く。
「三ツ葉ホールディングス専務取締役、本多様がいらっしゃいました!!」
会場の空気が一変する。
全員が入口へ視線を向けた。
そして現れた。
高級スーツを完璧に着こなした、一人の男。
三ツ葉ホールディングス専務取締役、本多忠信。
“三ツ葉グループナンバー2”。
ご老公の右腕。
その圧倒的存在感に、会場中の人間が息を呑む。
本多は迷いなく会場中央へ歩いてくる。
すると今川が真っ先に飛び出した。
「お初にお目にかかります!!」
今川は腰を九十度近く曲げる。
「三ツ葉エレクトロニクスPC事業部部長、今川と申します!!」
本多は無表情だった。
「実は今、ご老公様の名を騙るクズが騒ぎを起こしておりまして!」
今川は水戸を指差す。
「即刻クビにして、追い出して頂ければと……!」
本多はゆっくり今川を見る。
「お前が今川か」
低い声だった。
「青山から話は聞いている」
今川が勝ち誇った笑みを浮かべる。
だが本多は続けた。
「で、その“ご老公様の名を騙るクズ”とは誰だ?」
今川は即座に水戸を指差した。
「あいつです!!」
本多は水戸を見る。
そして小さく呟いた。
「……なるほど。そういう事か」
愛子も慌てて前へ出る。
「三ツ葉エレクトロニクス、コンシューマ事業部次長の水野です!」
必死にアピールする。
「あの男は、今川部長の功績を全部自分の物だと言い張った上に、本多専務の事まで呼び捨てにしていました!」
そして深々と頭を下げた。
「厳正な処罰をお願い致します!!」
本多は静かに頷く。
「分かった」
そして、そのまま水戸の方へ歩いていく。
会場が静まり返る。
今川と愛子は勝利を確信したように笑っていた。
だが次の瞬間。
本多は水戸の前で立ち止まると――。



