千紘の裏の顔について何か掴んでいる可能性が高い彼女と手を組めば、あるいは千紘を糾弾するための唯一の同志になりうる。
場合によっては、俺の計画を話してしまうのも手だろう。
肝心なのはタイミングだ。
乙葉を取り込むには、俺を信じさせるほかない。
手っ取り早くそうするには────あえて孤立させてみるのもありだ。
よるべをなくしたところに近づけば、無条件で信頼してくれるかもしれない。
心配しているふりをするのは簡単なことだと、千紘に教わった。
(悪く思うなよ、乙葉)
彼女を含め、みんなを守るためなんだから。
◇
「え……?」
掠れた声がこぼれて溶ける。
辻くんがジョーカー?
すぐには信じられない。
普段の明朗な彼の姿と陰湿なジョーカーのイメージとがまるで結びつかない。
「俺は一番近くであいつのこと見てきた。だからいち早く気づいたんだ、千紘の本性に。乙葉もそうなんだろ?」
答えられないでいると、沈黙を肯定と受け取ったらしい辻くんが続ける。
「人気者気取るために、自分作って嘘ついて騙してたんだよ。本当は1ミリも興味なんかないくせに、本気で心配してるみたいな顔して近づいてきて」
「…………」
「ちょろいもんだよな、俺らも。慕ってるみんなのこと、あいつは腹ん中で笑ってるんだよ。“くだらない”ってさ」
知らなかった。
誰より仲がいいように見えた辻くんが、実は速見くんに対してそんな鬱憤を抱えていたなんて。
ぎゅう、と心臓をつままれたような痛みが走る。
「……だから、裏切られたと思ったんだ。辻くんは」
そして自分同様、表向きの速見くんに騙されているみんなを守るか救うために、ジョーカーとして暴こうと画策したわけだ。
いつかの彼らの会話が自ずと蘇り、脳裏を伝う。
『うっさいな。おまえら、ジョーカーの意味知ってんの?』
『意味? 何それ』
『最強の切り札。由来は昔の宮廷道化師なんだって。民が言えないような、王さまとか貴族に対する批判も言ってたらしい。要は無敵ってこと!』


