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「自作自演?」

 このトーク画面も、ジョーカーによる暴露劇も。
 実は彼自身が仕組んだものなのかもしれない。

「てか、昨日のあれも何? 告られてもらった手紙を破り捨てたってこと?」

「やばすぎ。よりどりみどりだからって調子乗ってんじゃないの。お眼鏡にかなわなければごみ箱行きとか」

「うわ……速見くんってそんな人だったんだ」

 囁くような声はあちこちから発され、好き勝手に憶測が飛び交う。
 速見くんはスマホを見ることもなく、既に自分の席についていた。
 誰かから声をかけられることも、自分から否定や反論すべく立ち上がることもしないでじっとしている。
 何だか諦めているようにも見えた。

 この場にいたら積極的に動くであろう辻くんの姿はまだなく、だからか一花もさすがに様子見しているみたいだった。
 何となく肌で感じる。
 絶対だったキングの座が揺らぎ始めていること。
 決定的な何かがあるわけじゃないからこそ、徐々にだけれど確実に彼の株は下がっている。

「でも何で自演なんかしたの? 注目されたいから?」

「誰かに弱みでも握られたんじゃね? 下手に暴露されるより先に、暴露された被害者になりきれば同情買えるじゃん」

「こわ、それがガチなら腹黒すぎて引く」

 歪んだ笑み、囁き声、非難じみた視線。
 見事なまでにわたしから逸れたのに、それでいいはずなのに、たまらなくなる。

「……いや、待ってよ」

 深く考える余裕もなく、いても立ってもいられなくなる。
 誰にというか、この空気全体に向かって気づいたら異を唱えていた。

「誰かが勝手に速見くんのスマホ操作したかもしれないじゃん。体育のときとか目を離した隙に、それでスクショ撮った可能性あるよね」

 たまたまスリープしていなくてロックがかかる前に触れたか、たまたまパスコードを知っている人物がいたかもしれない。
 当てずっぽうで偶然(ひら)くことができた、ということもありうる。
 いずれにしても、自分(速見くん)発信のメッセージをスクショすることは本人以外にも可能だ。

「フォローしてるメンバー的にも、ジョーカーはこのクラスの誰かなんでしょ? 誰にでも犯人の可能性はあるよ」

 しん、と静まり返り、全員の注目を一身に浴びていたことに遅れて気がつく。
 だけど二言はない。
 間違ったことは言っていないはず。

「……なーんかおかしいよね」

 毅然と反応を窺っていると、おもむろに一花が立ち上がった。
 いつものように腕を組みながら歩み出てくる。

「乙葉にしても千紘にしても、突然のこの暴露劇は何? 何の茶番? ねぇ、あんたが何かやってんじゃないの」

「わたし……?」

 思わぬ疑いを向けられ、戸惑ってしまう。