わたしを陥れるために送られてきた例の罠のメッセージ。
吉木くんともどもまんまと釣られたわけだけれど、まさかその送り主がジョーカーだったなんて。
あのときは“Joker”なんてアカウント名ではなかったけれど。
いま改めて見ると、最後の一文は取ってつけたような感じが否めない。
たぶん“相談したいことがある”だけでは弱いと思ってつけ加えたんだろう。
実際、亜里沙の名前があったからこそわたしは行ったのだ。
「でも、これがジョーカーからのDMだったなら……ジョーカーは杏ってこと?」
どういうことなんだろう。
これは杏がわたしを嵌めるためだけに用意した捨てアカだったんじゃないんだろうか。
だとしたら、もう既に用済みのはず。
いまになって、なぜクラスメートみんなをフォローしたりしたんだろう。
これから、まだ何かを仕出かす気?
何だかとてつもなく嫌な予感がする。
何気なくタイムラインに戻ってみると、ちょうどジョーカーが新しい投稿をしていた。
一瞬にして凍りつく。
まさに爆弾投下としか言いようがない。
【おまえの裏の顔を暴露する】
しばらく釘づけになっていた。
“おまえ”って、まさかわたし……?
それなら“裏の顔”は、Otoのことなんじゃないだろうか。
杏にまで身バレした。
そう思い至ると、ひゅっと喉元が冷える。
(でも、何でいまになって……)
そう考えかけてすぐにひらめく。
杏がそういう行動に出るとき、動機はひとつしかない。
亜里沙絡みだ。
近頃の亜里沙は、わたしや一花たちに取り入ろうと見え透いたような安っぽい媚びを売っている。
杏にとってはたまったもんじゃないだろう。
自分が見捨てられるんじゃないかと不安を募らせ、1軍の中でも追い落としやすいわたしに標的を絞った。
わたしが落ちれば、パイプ役を失った亜里沙が元に戻ると踏んだにちがいない。
どこまでわたしの足を引っ張れば気が済むんだろう。
杏はどうしてそこまで亜里沙に執着しているんだろう。
思い通りにさせてたまるか。
腹立たしさで俄然、気力が湧いてきた。
杏はたぶん、まだ気づいていない。
ジョーカーの正体をわたしが勘づいていることに。
暴露予告をしてみせたものの、今日のところそれ以上の動きもなさそうだった。
近々、ということは間違いないだろうけれど。
(暴かれる前に暴いてやる)
この気味の悪いアカウント“Joker”の中身が杏であることを、先に晒す。
彼女の狡猾な本性も仕出かしてきた利己的な行動もぜんぶバラしてやる。
もうこれ以上、大人しく負けてなんかやらない。


