(……結局、またこうなんの?)
亜里沙や杏といたときも、いつもわたしが余ってきた。
屈辱にも似た、温度の高い感情がみるみる流れ出して指先まで達する。
ボールを持つ手に力が込もった。
「ひどいな、もうー。分かったよ、またあとで!」
貼りつけた笑顔で心を覆い隠し、同じように余っている子を探す。
普段3人で過ごしている地味な子が困ったようにきょろきょろと見回しているのを認め、小さくため息をつきながら歩み寄った。
「ねぇ、一緒にやらない?」
格のちがいを見せつけるべく余裕の笑みを向ける。
わたしは別に焦っても困ってもいない。
ただ一花たちが先に組んじゃったから、仕方なく折れてあげるだけ。
彼女は驚いたように目を見張ってから、ほっと表情を緩めた。
「あ、乙葉ちゃん。よかった、ひとりになって困ってて……」
いらっとした。
所詮、同類だと思われているのだと透けたから。
貴族に向ける畏怖の眼差しとはちがっていて、無理やり鎮めた感情が再び波立ってくる。
浮いてるもんね、という小夏の言葉が耳の表面を撫でていった。
なるべく気づかないふりをしていたけれど、やっぱり彼女たちの冗談は度を越しているとしか言いようがない。
抉られるほど辛辣だったり明らかに存在を軽んじていたり────スクールカーストそのものよりミクロな、グループ内のカーストをはっきりさせておくためだろう。
わたしの地位は確実に最下位だと、明確に線引きしておくため。
つまるところ、わたしを侮って舐めている。
普段わざわざ明言することはないけれど、こうやって誰かを選ばなきゃいけない機会に出くわすと痛感する。
選ばれた側は安堵と優越感を、選ばれなかった側は屈辱と劣等感を。
ずっと、いつも……わたしは後者だった。
ペア決めのみならず一緒に歩くときもそう。
それぞれ自然とふたり並ぶから、わたしは最後尾をひとりで歩くしかない。
その分、大きな声で明るい話を振らないと、そのまま誰も振り返らず、気にかけられもせず置いていかれそうになる。
前もそうだった。
いつも亜里沙が真ん中を歩いて、杏はこちらを見ようともしない。
わたしは愛想笑いばかりして、置いていかれないように必死で。
見ないようにしていた疎外感がまとわりついてきて、虚しく思う。
わたしは結局、誰にも必要とされない?
急激に自信を失い、悔しさと惨めさに飲み込まれそうになる。
────やっぱり、わたしはOtoにはなれないんだろうか。


