◇
体操服とシューズを提げ、一花たちと廊下を歩いていく。
先頭に一花と小夏が並び、その後ろを真穂と紗雪。
間に割り込むのも横に並ぶのもはばかられるから、わたしは仕方なく一番後ろをついていった。
あはは、という笑い声が階段の踊り場で反響する。
「昨日めっちゃ面白かったんだけど! 大げさなものまねで歌ってる乙葉の動画、SNS上げていい?」
「だめだめ、恥ずかしいから」
「じゃあ全校生徒に向けて校内放送でやってよ。絶対ウケるんだけど」
腕を組みながら一花が言う。
冗談なんだか本気なんだか微妙なラインのいじりだった。
「勘弁してよー! 次行くまでにレパートリー増やしとくから」
何となく彼女たちならただの冗談で済まさないような気もして、大げさなリアクションで笑って流した。
空気を壊さないまま、わたしの印象も落とさないまま、乗り切る有効な手段だと気づく。
「マジで? あんた、本当最高」
「分かってるねー。何か乙葉って、言ったら何でもやりそう」
遠慮のないもの言いだったけれど、すなわちそれが需要ということなんだろう。
「やるよー。わたしは一花たち貴族の召使いみたいなもんだからね」
「あは、それめっちゃその通りかも。あたしたちといても何となく浮いてるもんね」
「忠実な下僕みたいな?」
そう続けた小夏と真穂の言葉で笑いが生まれる。
一花も愉快そうに笑みを浮かべているのを見て、わたしはまたオーバーに笑ってみせた。
(これこそ冗談なのか本気なのか分かんないな)
ぐさりと胸の真ん中あたりを抉られる。
愛のあるいじりというものかもしれない。
一緒に遊んだことで最初より仲良くなったから。
いちいち傷ついたり腹を立てたりするのは、空気の読めない反応でしかない。
分かってない、と呆れられて幻滅されかねない。
冗談であれ本気であれいじりであれ、面白おかしいリアクションで受け止めるか、大げさに笑って流すのが正解だろう。
「じゃあパスの練習するから、自由にペア組んで始めてー」
体育教師のひとことで、わっと体育館が騒々しくなる。
ボールを抱えたまま一花たちの方を振り返るけれど、既にそれぞれふたりずつで固まっていた。
「ごめーん、乙葉。あたしたちで組むから適当に相手探して」
「何ならぼっちで壁当てしてもいいよ」
一花のひとことに甲高い笑い声が上がる。
わたしも笑って返したかったのに、頬が引きつって言うことを聞かない。
体操服とシューズを提げ、一花たちと廊下を歩いていく。
先頭に一花と小夏が並び、その後ろを真穂と紗雪。
間に割り込むのも横に並ぶのもはばかられるから、わたしは仕方なく一番後ろをついていった。
あはは、という笑い声が階段の踊り場で反響する。
「昨日めっちゃ面白かったんだけど! 大げさなものまねで歌ってる乙葉の動画、SNS上げていい?」
「だめだめ、恥ずかしいから」
「じゃあ全校生徒に向けて校内放送でやってよ。絶対ウケるんだけど」
腕を組みながら一花が言う。
冗談なんだか本気なんだか微妙なラインのいじりだった。
「勘弁してよー! 次行くまでにレパートリー増やしとくから」
何となく彼女たちならただの冗談で済まさないような気もして、大げさなリアクションで笑って流した。
空気を壊さないまま、わたしの印象も落とさないまま、乗り切る有効な手段だと気づく。
「マジで? あんた、本当最高」
「分かってるねー。何か乙葉って、言ったら何でもやりそう」
遠慮のないもの言いだったけれど、すなわちそれが需要ということなんだろう。
「やるよー。わたしは一花たち貴族の召使いみたいなもんだからね」
「あは、それめっちゃその通りかも。あたしたちといても何となく浮いてるもんね」
「忠実な下僕みたいな?」
そう続けた小夏と真穂の言葉で笑いが生まれる。
一花も愉快そうに笑みを浮かべているのを見て、わたしはまたオーバーに笑ってみせた。
(これこそ冗談なのか本気なのか分かんないな)
ぐさりと胸の真ん中あたりを抉られる。
愛のあるいじりというものかもしれない。
一緒に遊んだことで最初より仲良くなったから。
いちいち傷ついたり腹を立てたりするのは、空気の読めない反応でしかない。
分かってない、と呆れられて幻滅されかねない。
冗談であれ本気であれいじりであれ、面白おかしいリアクションで受け止めるか、大げさに笑って流すのが正解だろう。
「じゃあパスの練習するから、自由にペア組んで始めてー」
体育教師のひとことで、わっと体育館が騒々しくなる。
ボールを抱えたまま一花たちの方を振り返るけれど、既にそれぞれふたりずつで固まっていた。
「ごめーん、乙葉。あたしたちで組むから適当に相手探して」
「何ならぼっちで壁当てしてもいいよ」
一花のひとことに甲高い笑い声が上がる。
わたしも笑って返したかったのに、頬が引きつって言うことを聞かない。


