実際、わたしは選ばれた。
ほかでもないクイーンに価値を認められた。
まるでシンデレラのような気分だった。
わたしの本当の居場所は、ここだったんだ。
「ね、乙葉も行くよね?」
「うん!」
これもまた当たり前のように誘ってくれて、じわりと嬉しくなる。
わたし、ここにいていいんだ。そう再認識できた。
「あー、でもどうしよう。あたし、いまお金ないんだよね」
綺麗に整えられた爪をいじりながら、ふいに一花がそんなことを言い出した。
それが合図だったみたいに小夏たちもテンションを落とす。
「せっかく乙葉と遊びたいのになー」
一花以外は暗黙の了解のように口をつぐんでいた。
誰もが明らかにわたしの言葉を待っている。
そして悲しいことに、何を求められているのか瞬間的に悟れるほど、わたしは空気が読めてしまう。
「あ、じゃあ今日はわたしが奢るよ。だからみんなで行こ!」
「さっすが。マジで乙葉最高」
いつの間にか張り詰めていた空気がふっと緩んだのを肌で感じる。
一花の微笑みにも小夏たちのハイタッチにもほっとしてしまった。
やっぱり、正解だった。
流行りのアイドルの曲を歌う真穂と紗雪の声が、部屋にきんきん響いていた。
タンバリン片手に盛り上げる小夏と、聴いているのかいないのかスマホをいじっている一花。
楽しいんだろうか。
手拍子する腕が疲れてきたし、笑みを保つ頬も攣りそうになってくる。
あくびを抑えるために飲んでいたドリンクバーのジュースも、すぐに半分以下となってしまった。
やっぱり、女子同士なんてどこもこんなもんか。
「ねぇ、一花ちゃん」
一見退屈そうな彼女の隣に移動し、歌声に負けないよう呼びかける。
「ん? てか、呼び捨てでいいよ。なに?」
「あ、うん。ありがとう……ってお礼言いたくて。一花は恩人だよ。わたし、あのままだったらたぶんひとりになってたから」
彼女の意図がどうあれ、孤立しそうになっていたわたしが助けられたのは事実だった。
一花は組んだ腕と足を崩さないまま笑顔をたたえる。
「全然いいって、気にしないでよ。みんな仲良くした方がいいに決まってんじゃん? いじめとか仲間外れとかマジださいし」
意外な気持ちでその言葉を聞いていた。
傍若無人だと思っていたクイーンは、案外人の心を持ち合わせているのかもしれない。
ふと、一花の笑みが深まる。
「ね、乙葉。あたしたち、もっと仲良くなれるよね? これからたくさん遊ぼうね」


