掲げられた画面に表示されていたのは、Otoのアカウントページ。
 心臓を射抜かれた気がした。
 平静を装うためにたたえていた笑みが消え、頬が強張る。

「え……?」

「昨日、たまたまタイムラインに流れてきてさ。見覚えのある絆創膏だなって思って」

 彼は言いながらくだんの投稿と写真を表示した。
 確かにミルクティーを持つ左手の人差し指には、キャラクターものの絆創膏が巻いてある。
 速見くんからもらったものにちがいない。

 思わず自分の左手を見やるも、いまそこには何の変哲もない肌色無地のそれが巻かれているだけだった。
 昨晩お風呂で剥がれてしまい、巻き直したものだ。
 彼にもらったもう1枚は、やっぱり何だかもったいなくて使えなかった。

「あれ、って思って、ちょっと気になってフォローしたんだ。通知も入れた。そしたら、休み時間に……」

 あのトランプの投稿で確信したというわけだろう。
 あのとき、彼がわたしを見ていたのはそういうことだったのかもしれない。

「もし天沢がアカウントのこと友だちに内緒にしてたなら、俺みたいに絆創膏で気づいたのかもって。それで何かあったんじゃないか、って」

 わたしは呆然としたまま言葉を失っていた。
 Otoがわたしだとバレた。
 その衝撃に魂ごと貫かれ、あとに続けられた見当ちがいの憶測を否定することもできない。

 手遅れなのに心臓が暴れていた。
 痛々しさの象徴でしかないあれが、まさかよりにもよって速見くんにバレるなんて。
 あまりの恥ずかしさから汗が噴き出す。
 強い喉の渇きを覚えながら立ち尽くした。

「でも、ちがうってことは関係なかったんだ。ごめん……何か、こんなこと。聞かなきゃよかったよね」

 分かっているなら放っておいてくれればよかったのに。
 知られていても、わたしがそのことに気づかなければまだ救われた。
 これじゃ一方的に恥を晒されただけだ。
 顔も身体も焼けるほど熱いのに底冷えしてわなないていた。

「でも、フォロワーすごい多くてびっくりした。人気者なんだね、天沢」

 ……何それ、埋め合わせでもしているつもり?
 速見くんに言われても、ばかにされているようにしか聞こえない。

「あ、何なら次は一緒にトランプで遊ぶ? 一花たちにも言っとこうか?」

「ばか言わないで……!」

 そんなの絶対無理。いろんな意味で。
 とっくに表向きの自分を演じる余裕を失い、間髪入れずに噛みついていた。