探り合うような沈黙が落ちる。
答えるのに時間をかければかけるほど、場が白けて彼女たちの不興を買うことになってしまう。
分かっていても、わたしはただ無言で杏の背中を押し続けることしかできなかった。
「確かに……そうかも」
やがてぽつりと呟かれた杏の言葉で、一花たちは沸いた。
だよね、やっぱり、という声が飛び交う中、驚いたように杏を見つめてしまう。
さすがに意外だった。
亜里沙にべったりの彼女がそちら側に立つなんて。
(でも、まあ……やっぱりそれが“正解”か)
そうひとりで納得していると、一花の目が今度はわたしに向く。
「乙葉は?」
「うん、わたしもそう思ってた」
空気を読んで笑ってみせる。
彼女たちがいっそう盛り上がったのに煽られ、追い風を受けた。
「いっつも自分が話したいことだけ話してひとの話聞かないんだよ。つまんないのろけとかばっかでさ。自分のことしか考えてないの。こないだなんて、帰らなきゃいけないって言ってるのに無理やりカラオケ付き合わされそうになって」
「えー、マジ?」
「それでも断ったらなんて言ったと思う? “今回は見逃してあげる”だよ。散々文句言われたし」
一花が笑い、彼女たちの顔が非難げに歪んでいく。
何だか痛快だった。
日頃、蓄積していた鬱憤が晴れていくみたい。
彼女たちのリアクションはわたしのストレスや不満を肯定してくれているようで、刺々しかった気持ちが和らいでいく。
「それはひどいねー。うちらだったら絶対言わないよ、そんなこと。上から目線すぎでしょ」
「見るからに自己中じゃん。自分さえよければいい、みたいな」
それに関しては彼女たちにも当てはまるような気がしたけれど、口をつぐんで笑っておく。
ここ数日、ストレスが溜まっていたのだと思う。
勝手に期待して、勝手に裏切られた気になって、勝手に失望して亜里沙を逆恨みした。
冷えた頭では分かっていた。
分かっていたけれど、もう限界だった。
「でも本当、そんな感じ。我が強いし気も強いし、一緒にいると疲れる」
そう言った瞬間だった。
ふいに笑いの波が引き、尖った空気で肌がひりつく。
みんなの視線がわたしの後方に向いていることに気がつき、そっと振り返ると亜里沙の姿が目に入った。
心臓を射抜かれる。
凍えるような針のむしろを全身に押し当てられている心地がした。
「亜里沙……」
渇ききった喉からかさついた声がこぼれる。
聞かれていただろうか。
どこからどこまで? いつからそこに?
「……ウケるんだけど。乙葉って案外喋るんだね、面白かった」
じゃ、と言い残して立ち上がった一花を先頭に、それぞれ教室を出ていった。
入れ替わるように亜里沙が座る。
そわそわ、はらはら、落ち着かない心が揺れて冷や汗が滲んだ。
「お、おかえり。遅かったね」


