困惑で眉根を寄せたまま固まってしまう。
読み終わっても意味がよく分からず、何度も目で文字をなぞった。
「なに……え、どういうことですか?」
「いや、こっちが聞きたいんだけど。呼び出しといてからかってんの? 亜里沙の話だって言うから来たのに」
明らかに機嫌を損ねた様子でスマホを奪い返す。
思い出したようにわたしもスマホを取り出した。
「待って、呼び出されたのはわたしなんですけど」
「……え?」
理不尽に怒られて気を悪くしてしまったものの、そう言うと彼も彼で戸惑いをあらわにした。
同じようにダイレクトメッセージの画面を見せる。
それから顔を上げた彼とはたぶん、同じ表情をしていただろう。
「何これ、マジでどういうこと?」
「分かんない。お互いがお互いに呼び出されたと思ってたけど……」
スマホをしまいつつ、彼を眺める。
「そもそもあなたは? 亜里沙とどういう関係なんですか?」
「ああ、俺は……C組の吉木。亜里沙と付き合ってる」
じゃあ、彼女がいつも自慢げに語っていたのはこの彼、吉木くんのことだったわけだ。
話にはよく聞いていたものの、わたし自身は初めて目にかかった。
「そうだったんだ。え、でもそれなら……吉木くんは本当に相談があるわけじゃないんだよね?」
「うん、別に。あったとして初対面のあんたにはしないだろ。友だちだとしても」
遠慮のないもの言いだけれど、言っていることは正しい。
わたしが彼の立場でもきっとそう思う。
「じゃあ何だったんだろう。いたずら?」
「そうなんじゃない? あー、何か緊張して損した。何もないならもう帰るわ」
「あ、うん……」
わたしも肩透かしを食らった気分だ。
おざなりに切り上げた吉木くんは淡々と背を向ける。
特に引き止める理由もない。
メッセージに関して彼は無頓着な様子だったものの、わたしは何か胸騒ぎがしていた。
だって、吉木くんに届いたメッセージにはわたしの名前がはっきり書いてあった。
わたしを知る誰かが、天沢乙葉の名前を騙って彼を呼び出したなんて、いたずらで済ませられるだろうか。
何か意図がないと不自然だ。
ひとまず亜里沙には言わなくてもいいだろう。
何だかややこしいことになっているし、あらぬ誤解を招いたら面倒だ。
(でも、誰なの?)
あの捨てアカの本当の持ち主は────。
いったい、目的は何だったんだろう。


