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 素直に驚いてしまう。
 前に一度、このクリームパンがおいしくてお気に入りだという話を確かにしたことがあった。
 けれど、まさか覚えていたなんて。

「あ、ありがとう」

「ほかに何かいる? 全然取ってあげるけど」

 杏がいないだけで、その気遣いや心遣いのリソースをわたしに()いてくれるんだ。
 自ずと優先順位を引き上げてもらえるものなんだ。
 束の間、孤独感から解放された気がする。

「あ、じゃあ……焼きそばパンも食べたい」

「お、あたしも同じ気分だった! 任せといて」

 もしかしなくても、杏にとって不本意なのはこの状況だったんじゃないだろうか。
 自分のいない隙に亜里沙と仲良くされたんじゃたまらない。
 ぎりぎりで保っている“3人組”の均衡(きんこう)が崩れる。

「ありがと。亜里沙がいてくれてよかったー」

「パンにありつけたからでしょ」

「あは、バレた? ねぇねぇ、今日の放課後どっか寄ってかない?」

 逆にわたしにとってはまたとないチャンス。
 いまのうちにわたし寄りに亜里沙を引き込んでおけば、あのどうしようもない疎外感に(さいな)まれずに済む。
 ざまあみろ、なんて思うのはさすがに病人相手に不謹慎か。

 ────だから、たぶんばちが当たったんだ。



 放課後、亜里沙とともに駅前のカフェに足を運ぶ。
 それぞれが頼んだミルクティーとカフェオレが運ばれてくると、並べて写真におさめた。
 続いて内カメラにして、わたしたちもふたりで撮った。

「これ、SNS上げていい?」

「いいよー。あたしにも送って」

「了解」

 もちろん、Otoではなくリアアカの方だ。
 亜里沙がOtoのフォロワーということは、下手な投稿をすると身バレに繋がりかねない。
 あとでまとめてやろうとスマホを伏せたとき、ストローに口をつけながら亜里沙が言う。

「何か新鮮だね、乙葉とふたりで遊ぶの。めっちゃ珍しくない?」

「珍しいっていうか初めてじゃないかな。だいたい3人か、そうじゃないときは亜里沙たちふたりだし」

 無意識のうちにささやかな毒を込めてそう返していた。
 わたしを除いては平気でふたりで出かけるくせに、わたしとふたりで行こうとはならない。
 単にわたしがつまらない人間だからと言われればそれまでなのだけれど。

「そう。だから今日誘ってくれて嬉しかった」

 難なくひらりと(かわ)される。
 気にしているのはわたしだけかと、いつものもやもやが(くすぶ)った。