襲撃に私は静芽から剣を受け取り、警戒して女性を見下ろす。

状況を整理しようと固唾を飲んでいると、女性は艶っぽく唇に微笑を添える。

「乳繰り合っているところごめんなさいね」

「ちっ!?」

あまりに卑猥な発言に恥ずかしさより苛立ちが上回る。

剣を握る手が怒りでわなわなと震えだした。

(な、な、なんて下品な言葉! ちちっ……じゃなくて、ちょっとキスしただけよ!)

癪に障るので、ひたすら嫌悪をこめて目を鋭くする。

気配に敏感な静芽が気づけなかった相手だ。

何者かはわからないが、少なくとも私たちにとって好意的な相手ではない。

「アタシはメア。今日は弓巫女さんが遊びに来てくれたからご挨拶をしに来たの」

メアは足元まで伸びる銀の髪を、ひと撫でで背中に流す。

「帝都に来てから妙な気配を感じていたが、犯人はお前だな」

「いやん。アタシに気づいてくれていたってことね。恥ずかしい……けどうれしいわぁ」

わざとらしい甲高い声に静芽は青筋をたて、後ろに下がる。

(あ。そうとう引いてる)

なんとなく静芽の好き嫌いがわかってきて、今は強めの嫌悪感を抱いているようだ。