途切れた口伝。

それは父の代から。先代巫女が突如亡くなり、父が当主の座についた。

巫女の能力を有していない父は、長き伝統のある巫女家系のトップに執着している。

もし弓巫女の不安定さが、ずさんなものとは別に原因があるとすれば……。

(父上のせいってこと……?)

先代当主が亡くなり、口伝が途切れたことを龍神が怒った?

それが大罪となるの?

龍神に見限られるだけのこととは思えないが……。

「口伝は……意図して途切れた?」

考えたくもない疑念。
口にするのもおそろしい。

だが心に反して、静芽はうなずいた。

今までにない自己嫌悪が襲いかかってくる。

どうして私は知ろうとしなかったのかと、胸が重苦しくなって胃液が口の中に充満した。

弓巫女がどうだとか、何が起きているとか、大して気にしていなかった。

私が強くなれば、瀬織の負担が減るとだけ信じて、本質を見ようとしなかった。

”私、瀬織を守るよ!”

瀬織を守ると母に約束した。

あいまいな目標のまま突っ走って、当主になる瀬織を支えることが役割だと思っていた。

どんな風に瀬織を支えるか、まったく想像できていなかった。

無謀で愚かな、生き恥だ。

(ああ、いやだ。なんて最低なの。瀬織にばかり苦しい思いをさせた)

私の愚かさが瀬織をがんじがらめにした。

そんなことは望んでいなかった、と今さら言い訳しても許されない。

――同時に、そうして落ちこんでいれば楽だ。

気づかないふりをしていれば、これ以上傷つかない――が、そんなお姉ちゃんはお断りだ!!

両頬を叩いて、私はふんぞり返って静芽に虚勢の笑いを向けた。

(だったら私がやることは行動を変えること!)

目標は変わらない。

そこに至るまでの行動を変え、瀬織を支えるお姉ちゃんになる。

もっと具体的に。
もっと深いところまで。
瀬織だけに背負わせない。

私は白峰家の巫女だから!!