(まさかそのことを言いたいの?)

「簡単に衰退するものじゃない。それこそ大罪でも犯さない限り。巫女は龍神によって采配された役割。衰退しないようはじめから決まっているんだ」

「大、罪……?」

静芽の言葉をなんとか理解しようとかみ砕いていく。

筆頭家門の巫女は武器を継承し、ともに口伝を受け継ぎ未来に伝えていく役割をもつ。

口伝の内容が適切に継承されなかった今、瀬織は必要以上に弓巫女の立て直しに固執している。

だがよく考えれば、とんでもない矛盾を抱えた状態だ。

巫女の適性者は急激な増加も減少もしない。

そのはずなのに、どうして私たちは弓巫女の数が減っているように感じているのだろう?

あやかしが増えていると感じるのは、巫女が足りていないから一人当たりの負担が増えているだけ……。

あくまで感じるだけのことであり、誰も根本的な原因は追究しなかった。

適性者がいなくなると、誰も考えていなかったから――。

外様巫女たちのぼやきを思い出す。

”最近は巫女が少ない”や”手が回らない”と不満を口々にしていた。

それでも弓巫女の崩壊までは想像しない。
ハッキリと”衰退している”と言えるのは、瀬織が弓巫女の衰退の本質を理解しているから。

当主になるときっぱり言いきるのは、弓巫女の枷をすべて持つ気でいるからだ。

「弓巫女が大罪を犯した……?」

「巫女は、地上にはびこるあやかしを退治する役割を持つ者。その力の源は龍神なんだ。龍神が巫女を減らさない。それが龍と巫女の約束だから」

「だとしたらどうして弓巫女が減るの? 大罪ってなに!? 私たちがいったい何をしたって――!!」

脳裏をよぎったのはダイキライな父の顔だった。